Rainfall characteristics and their factors in summer Kazakhstan

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  • 夏季のカザフスタンの降水の特徴とその要因

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Ⅰ はじめに<br><br> これまで筆者はモンゴルにおける夏季の降水量の分布とその要因を研究してきた(木村 2015,2017など)。その結果、東経110度より東側は日本海からの水蒸気流入により降水が多いのに対して、それより西側では温帯低気圧がやってきても降水量が少ないことがわかった。本研究では、モンゴルよりもさらに西側に位置するユーラシア大陸中央部の降水と低気圧との関係について明らかにしていく。<br><br> <br><br>Ⅱ データと解析方法<br><br> 月降水量の観測データは、米国National Centers for Environ-mental Information (NCEI)のGSODデータを月合計降水量に編集した。海面校正気圧データ、各層の気温・等高度面気圧・風向風速および面的な降水量のデータは、1985~2018年におけるECMWFのERA-Interim 0.5度グリッドを使用している。<br><br> 降水量の地域区分は、やや古いが1970~1990年の気象観測点(20地点)のデータを階層的クラスター分析(Ward法)により分類した。また、北緯45度に沿った低気圧と降水量の時系列変化をアイソプレス図として表示し、東に進む速度を示す。さらに、大気中層のトラフ・リッジ等の移動との関係について示す。<br><br> <br><br>Ⅲ 降水の季節変化<br><br> 降水の季節変化は、月降水量のクラスター分析により、カザフスタン全域を北部、南部、Almatyという3つのクラスターに分けられた(図Ⅰ)。このうちAlmaty(北緯43度16分、東経76度53分)はすぐ南にある天山山脈の影響により降水量が多く、1地点で1つのクラスターを形成している。北部と南部の違いのうち特徴的なの点は、6~9月の雨量であり、南部ではほとんど雨が降らない(図2)。<br><br> カザフスタン南部で夏季に降水がほとんど無い理由としては、温帯低気圧がやってきても、乾燥した大陸の中央部であることから吹き込む風が乾燥しており、雨を降らせるだけの水蒸気が無いためである。<br><br> <br><br>Ⅳ 低気圧の東進と降水<br><br> 解析例として、2018年6~9月における北緯45度における降水量の時系列を図3に示す。東経80度付近は標高が高いために降水が多いが、おおむね低気圧の東進に伴って降水帯が東に移動していることがわかる。また、7月下旬~8月中旬には東経100度付近まで降水がみられている。<br><br> 図3のうちカザフスタン領域となる東経52~82度のうち、標高の高い東部以外では、夏季にほとんど降水が見られないが、こえは図2で示された内容と一致している。<br><br> <br><br>Ⅴ 切離低気圧の形成と降水<br>図3で示されている降水帯の東進速度を追っていくと、ほぼすべて同じ速度であるが、1回だけ、8月上旬に速度の速い降水帯が形成されている。これは大気中層の切離低気圧(図4)に伴った現象であり、モンゴルで指摘されている(木村 2017)構造と類似している。この他の年をみると、こうした切離低気圧は毎年発生しているわけではなく、数年に一度の現象であることがわかった。今後、切離低気圧の発生と低気圧の速度に関して、さらに事例を集め、メカニズムに迫りたい。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390845713072777344
  • NII Article ID
    130007628557
  • DOI
    10.14866/ajg.2019s.0_247
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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