O-2-B14 カルバマゼピンによる薬剤性膵炎と診断された重症心身障害者の2症例

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はじめに 重症心身障害児(者)は症状を訴えることができないため、特に消化器疾患では痛みの有無さえ分からず重症化することが多々あることはよく知られている。今回、原因不明の急性膵炎を繰り返し約2年後にカルバマゼピン(CBZ)による薬剤性膵炎の診断に至った症例とその症例の経験からCBZ投与開始から6年後に発症したCBZによる薬剤性膵炎と診断された症例を紹介する。 症例1 62歳女性、臍帯巻絡による新生児仮死により重症心身障害者となった。てんかんに対し32歳よりCBZの内服が開始された。56歳時に急性膵炎(P-アミラーゼ3770U/L リパーゼ18646U/L)を発症し加療にて軽快。胆道系等原因精査するも急性膵炎の原因は不明で経過。その後アミラーゼ(AMY)の上昇のみのものを含め7回の急性膵炎を繰り返し56歳時の急性膵炎発症時にCBZによる薬剤性膵炎を疑いCBZを漸減中止。その後、急性膵炎の発症は認めなくなった。 症例2 44歳男性、5歳時の頭部外傷により重症心身障害児となった。30歳時にバルプロ酸(VPA)による薬剤性膵炎の既往ありVPA投与は中止され34歳時にCBZの投与が開始された。41歳時に急性膵炎と診断されたが胆石の合併や胆管系の異常なくCBZによる薬剤性膵炎を疑いCBZを漸減中止。急性膵炎は軽快した。 考察 VPAによる薬剤性膵炎はよく知られているが、CBZによる薬剤性膵炎の報告は少ない。今回の症例はいずれも数年に渡り投与されたCBZによる薬剤性膵炎の発症という特徴がある。また症例1については腹痛の有無が分かり難く筋性防御所見も不明瞭であり、さらにp-AMYの上昇はあるが腹部CTにて膵臓の腫大を合併しないときがあったことが、より診断を困難にした要因と思われた。

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