長野県における農業的土地利用が黒ボク土の分布に及ぼす影響
書誌事項
- タイトル別名
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- Influences of agricultural land uses on distribution of Andosols in Nagano, Japan
抄録
1. 背景<br><br>長野県の西側県境には御嶽山、白山、乗鞍岳などの活火山があるため、県全体が広く火山灰の降灰を受けていることから、火山灰を母材とした黒ボク土が県内の主要な土壌として分布している。その面積は2208㎢におよび県面積の16.6%を占めている。また、起伏に富む地形による火山灰の移動集積が腐植表層の厚さが異なる黒ボク土を生成・分布させている。比較的厚い火山灰が集積しやすい段丘上や火山麓地では腐植の堆積により厚層黒ボク土が生成し、逆に表層浸食を受けやすい傾斜地では腐植層が薄い淡色黒ボク土が生成する。しかしながら、緩傾斜地に分布する黒ボク土は古くから農地利用され、その土地管理により人為的な改変を受けてきたことから黒ボク土と傾斜との関係は複雑である。そこで、本研究では農地利用と黒ボク土の分布との関係について、特に名称の由来となる黒色の腐植質表層の特徴に着目して、長野県における各種黒ボク土の面的分布特性について検討した。<br><br>2. 手法<br><br>長野県内の黒ボク土の分布域および面積と斜面傾斜角との関係について、長野県を含む10m等高線間隔の数値標高モデル(10mDEM)(国土地理院,2018)と20万分の1土地分類基本調査による土壌図「長野」(国土交通省,1974)および縮尺5万分の1農耕地包括土壌図「長野」(農研機構,2017)を用いて、ArcGIS 10.2.2(ESRI Japan,東京)により黒ボク土の分布を計算した。なお、対象とした黒ボク土とその基準は日本土壌分類体系(2017)に基づき、厚層黒ボク土:層厚50cm以上, 普通黒ボク土:層厚25cm以上50cm未満, 淡色黒ボク土:層厚25cm未満とした。<br><br>基盤地図情報等高線データ(国土地理院,2014)、数値地図25000「長野」に収録された南大塩図幅(国土地理院,1988)および2万5千分の1地形図の茅野図幅(国土地理院,1988)を用いて, 農地造成による地形改変面積を算出した。この地形改変域と厚層黒ボク土の分布域の重複する範囲の面積を算出し、腐植質表層が人工的な剥離により異なる黒ボク土に改変された面積として算出した。<br><br>3. 農地利用による黒ボク土分布域の変化<br> 長野県茅野市を含む土壌図上では調査対象地の上古田地区の台地上に広く厚層黒ボク土が分布しており、その面積は583haであった。同地域は傾斜地であることから狭小な面積に農地開拓されており、腐植質表層も厚く保持されていたことが推測された。しかしながら、農業機械の大型化に対する農地面積の拡大は大規模造成を必要としており、腐植質表層は作土を確保する程度に盛土されていることが現地における広域調査で明らかになった。50cm以上の腐植質表層を有していた厚層黒ボク土が耕作土層の推奨深である15~20cm程度の均一な厚さで盛土造成されていることが確認された。農地の一区画内ではバラツキはあるものの、平均して25cm未満であることから農地造成を受けた土壌は淡色黒ボク土に分類された。調査区域を包含する地形図およびDEMを用いたGISにより算出した切土および盛土による地形改変面積は、それぞれ切土面積が440haであり、盛土面積が379haであった。地形改変された総面積は318haであり、対象地域における厚層黒ボク土分布域の54.6%が造成による表土剥離をうけて淡色または普通黒ボク土に改変されていることが明らかになった。このような切土・盛土による農地造成は県内の他地域でも確認されたことから、造成による黒ボク土の改変は広く全国的に生じているものと考えられた。
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2019s (0), 290-, 2019
公益社団法人 日本地理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390845713073606272
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- NII論文ID
- 130007628547
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可