河川・地下水の流入負荷と塩湖の水質形成

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タイトル別名
  • Inflow load of river and groundwater and water quality formation of saline lakes

抄録

塩湖は「水中の塩分が1ℓ中500mg以上含まれる湖」と一般的に定義される。塩湖では降水量より蒸発量の方が卓越しており,流出河川も地下水も存在しない。そのため,溶存化学成分は湖水中に濃縮されるか,もしくは溶解度積に達して沈殿除去される。その時、流入水の水質組成の違いにより、塩湖の水質は多種多様となる。シククル湖は、1986年以降塩分濃度が高まっていることが報告されており、特に水位が上昇に転じた1998年以降も塩分濃度が増加し続けている要因については不明である。イシククル湖の水質形成機構を把握するためには、湖及び集水域全体の調査を継続的に行い、流入する河川、地下水の水質が湖に及ぼす影響や蒸発濃縮,生物活動に伴う湖の水質の変化を把握する必要がある。本研究では、2012年~2017年に行った調査結果を基にイシククル湖流域の水質の特徴を把握すると共に、イシククル湖に流入する河川と地下水の負荷量について検討した。その結果、イシククル湖の水質はNa+‐Cl-(Mg2+‐SO42-)型を示し、Ca2+とHCO3-は2-3%と最も低いが、海水と比較してMg2+、SO42-濃度の割合が高いという特徴を持つ。流域内河川はCa2+ - HCO3-型を示し、その他成分ではSO42-濃度が若干高い特徴を持つ。湖東部の河川ではSO42-濃度の他、Na+、Cl-濃度が高い地点が見られ、周辺は農地で占められていることから人為による影響が示唆された。また、湖南部から西部にかけて温泉の存在が確認され、全溶存物質(TDS)はイシククル湖よりも高く、水質はNa+‐Cl-型やNa+‐Cl-‐SO42-型を示した。当地域での温泉以外の湧水や井戸水からも、TDSは低いものの、似たような水質タイプであることが確認されている。イシククル湖への流域からの負荷量ではHCO3-が最も多く、次いでCa2+、SO42-、Na+、Cl-、Mg2+の順で多かった。イシククル湖では蒸発濃縮などの影響により水中からCa2+とHCO3-が除去されていると考えると、流域からの供給はSO42-が最も多い。イシククル湖の水質タイプと照らし合わせると、Mg2+が最も低いという点で共通している。Na+とCl-の負荷量は温泉水に依るものだと考えられることから、温泉水の流入がイシククル湖の水質に大きな影響を与えている可能性が考えられる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713073617280
  • NII論文ID
    130007628684
  • DOI
    10.14866/ajg.2019s.0_325
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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