阿蘇カルデラ北西部・的石牧場Ⅰ断層上の表層火山灰再堆積物の分析

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  • Analysis of surface reworking volcanic ash deposit crossing Matoishi Bokujo I active fault, NW Aso caldera, Japan

抄録

1.はじめに<br><br> 2016年熊本地震の主要な震源断層からかなり離れ,余震もほとんど発生しない阿蘇カルデラ北西部,的石牧場Ⅰ断層の周辺で,地震前後の観測データから生成されたSAR干渉画像から明瞭なリニアメントが判読された(Fujiwara et al., 2016)。<br><br> 既に宇根ほか(2018)によって,本断層がなす撓曲崖で掘削されたトレンチの記載が報告されている。このトレンチでは火山灰層の明瞭な純層は見当たらなかったが,断層運動の履歴を把握する資料とするため,黒ボクの上に載る表層の火山灰再堆積物のガラスの屈折率を分析した。<br><br>2.方法<br><br> ほぼ東西に走る本断層に直交するように掘られた長さ6mのトレンチの壁面において,地表から深さが概ね50 c mの表層で,再堆積した暗褐色の火山灰層が見られた。この再堆積層の山側は礫がちであった。<br><br> トレンチ壁面の観察から判断して,変位が想定される場所を跨ぐように,グリッド上端からW2/3の列(山側)では深度30~40 cmと40~50 cmの場所で,W4/5の列(谷側)では深度40~50 cmと50~60 cmの場所で,それぞれ試料を採取した。水洗後,篩で粒径をそろえた。実体顕微鏡の鏡下で事前に取り分けた50個程度のガラスの粒を,浸液SD51とともにスライドグラスの窪みに封入し, RIMS2000(温度変化屈折率測定装置)で屈折率を測定した。<br><br>3.結果と考察<br> 図に示すように,トレンチ壁面のW4/5の列(谷側)では,屈折率1.508~1.511に相当するバブルウォール型平板状のアカホヤ火山灰のガラスは4~6粒であり,屈折率1.497~1.501に相当するAT火山灰のガラスの8~14粒より少なかった。W2/3の列(山側)では,アカホヤ火山灰のガラスは2~3粒であり,AT火山灰のガラスの9~11粒よりはるかに少なかった。この火山灰再堆積物の供給場は山側の斜面と想定しているが,アカホヤ火山灰が降下した時期には,谷側より山側のほうがその火山灰の流亡が著しく,本断層による撓曲崖が既に成立していた可能性がある。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713074394112
  • NII論文ID
    130007628517
  • DOI
    10.14866/ajg.2019s.0_274
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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