原子力の「再生」「新生」への道と新たなグローバル・レジームの形成

書誌事項

タイトル別名
  • “Nuclear Renaissance” and a New Global Regime for Nuclear Safety and Security
  • 講演 原子力の「再生」「新生」への道と新たなグローバル・レジームの形成
  • コウエン ゲンシリョク ノ サイセイ シンセイ エ ノ ミチ ト アラタ ナ グローバル レジーム ノ ケイセイ

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説明

<p> 原子力を巡る最近の世界の動きは, イランや北朝鮮に見られる核不拡散の問題, 9.11米国同時多発テロ事件以降, 再認識された原子力セキュリティの問題, および次世代の原子力市場の模索などが複雑に絡み合う中で, 米ロ大統領やIAEA事務局長による新たな国際的取組みの具体案が提示され, 極めてダイナミックなものとなっている。特に, エネルギー源と環境対策としての原子力の重要性に対する世界的な再認識と, それによる原子力産業の将来市場への期待感の増大は, しばしば原子力の「再生」あるいは「ルネッサンス」と呼ばれ, 大きなビジネスチャンスとして捉えられることが多い。原子力主要国は, このような動きを先取りすべく, 官民一体となった戦略を進めている。また, 原子力平和利用の大前提たる安全確保においても, 科学的合理的な管理と規制の実施により, かつてない高い安全パフォーマンスを実現している。<br> 一方, IAEA越しに見える日本は, 目の前で起こっているダイナミズムに期待感を持ちつつも, 従来型の受身の対応に停まっているかのような印象を受ける。そればかりか, 近年の度重なった事故や事件と, それにより事後対応的に強化された管理と規制によって, かつて誇った国際的に高い運転実績と安全レベルが近隣諸国にも遅れをとるようになり, 他国が日本を参考とする意義も薄れてきている。このままでは, 日本は原子力に係るルールづくり, 技術, 人材のいずれにおいても海外に遅れを取り, 世界の原子力の「再生」の動きに取り残されてしまうのではないかと危惧される。<br> 本稿は, 世界の原子力を巡る動きを概観しつつ, 日本の原子力の「再生」実現に真剣に取り組んでいる関係者に少しでも役立てばと願って, 率直に私見を述べるものである。21世紀を迎えて, 政治, 経済, 社会, 技術, 資源, 環境問題の本格的グローバル化を背景として, 原子力を巡る世界の政治と市場は大きな潮流の変化を経験しつつある。日本が, この歴史的機会を逃さないためには, 「再生」を古き良き時代の再到来として捉えるのではなく, 世界のエネルギー資源制約と環境問題の克服を目指す国際枠組みづくりに積極的に参加するとともに, 競争力のある総合ハイテク産業分野をその技術基盤を含め新しく創り出すという意気込み, すなわち, 「新生」の認識が重要である。</p>

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