政策過程における行政責任論の諸相――原子力政策をめぐる専門家のアカウンタビリティ――

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タイトル別名
  • The Theory of Administrative Responsibility in Policy Process: The Concept of Professional Accountability and the Case of Nuclear Energy Policy in Japan
  • セイサク カテイ ニ オケル ギョウセイ セキニンロン ノ ショソウ : ゲンシリョク セイサク オ メグル センモンカ ノ アカウンタビリティ

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抄録

<p>行政責任論を現実の事例に適用した研究は少ない。フリードリッヒ(Carl J. Friedrich)とファイナー(Herman Finer)が繰り広げた行政責任論争では,双方の主張とも広範な支持を集めてはいたが,その妥当性は検証を経て証明される必要がある。本稿ではその事例として原子カ政策を取り上げる。「国策民営」に象徴されるように,原子力政策は行政と密接不可分に推進されてきた。したがって,行政責任の追及は政策責任の確保に寄与すると考えられる。だがそれゆえに行政の裾野は大きく,委託受託の責任連関ヘトップダウン型の統制を加えることには困難を伴う。また,先端技術領域に見られる経路依存性の問題は原子カ政策にロックイン効果をもたらしたが,これがアカウンタビリティ確保の阻害要因であったことにも留意すべきである。このような状況下で,正統性の調達に貢献してきたのか専門家である。民主主義による統制にかわり,専門家はアカウンタビリティを果たしてきたと考えられてきた。その背景にはフリードリッヒの唱えた「機能的責任」(functional responsibility)が基盤として存在していたが,福島第一原子力発電所事故は機能的責任の脆弱性を露呈させてしまったのである。専門家によるアカウンタビリティはどのようにして形骸化されたのか。行政責任論の抱えるジレンマが具現化する過程を,実際の事例を通じて考察する必要がある。</p>

収録刊行物

  • 公共政策研究

    公共政策研究 12 (0), 106-115, 2012-12-17

    日本公共政策学会

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