臨床研究実践のコツ~病棟薬剤師の「気づき」から研究実現まで~

DOI
  • 鈴木 賢一
    公益財団法人がん研究会がん研有明病院薬剤部
  • 山本 信之
    和歌山県立医科大学医学部内科学第3講座教授

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タイトル別名
  • Clinical Research Practice Tips - From Pharmacist's "notice" to Research Realization -

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抄録

2012年「Cisplatinを含む高度催吐性化学療法施行時の嘔吐に対するグラニセトロン(以下GRA) 1 mgとパロノセトロン(以下PALO) 0.75 mgの二重盲検ランダム化比較試験:TRIPLE study」を実施した。これは全国から842例を集めて実施した第Ⅲ相試験であり、日本癌治療学会から推奨されている3剤併用標準制吐療法において、セロトニン受容体拮抗薬(5-HT3RA)の中ではどの薬剤を使用すべきかを検証した試験である。2010年に発売された5-HT3RAのPALOは長時間作用型であり、特に高度催吐性レジメンにおいて期待されていた。しかしながら従来の5-HT3RAに対し優越性を証明した試験は見当たらず、また他の5-HT3RAに比して高価であったため、臨床現場ではPALOを積極的に使用すべきか意見が分かれていた。筆者らはPALOの優越性を検証し、上乗せ効果を確認しなければ高価なPALOを安易に使用するべきではないと考え本試験を実施した。その結果、嘔吐や追加の制吐薬を使用しなかった (Complete response: CR)割合では統計学的な有意差はわずかに得られなかったものの、PALO群でより高い効果であった(CR率: PALO 65.7%, GRA 59.1% P = 0.0539)。業務の中で自らクリニカルクエスチョンを見つけ出し、解決のために大規模な多施設共同研究の実現につながった。この結果は本邦におけるガイドラインで引用されるに至ったが、実現するためには二重盲検化や他職種との協力、他施設間の連携など多くの準備が必要であった。本稿ではTRIPLE試験を通じて薬剤師が実施する臨床研究の意義を概説する。

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