チオ-ジメチルアルシン酸処理細胞における染色体数の長期的変化

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  • Long-term changes of chromosome number in the cell treated with thio-dimethylarsinic acid

抄録

<p>これまで我々は、ヒ素のメチル化代謝物チオ-ジメチルアルシン酸(thio-DMA)が紡錘体チェックポイントを活性化して細胞を分裂前中期に蓄積させるとともに、分裂関連細胞死を引き起こすことを明らかにしてきた。その一方、紡錘体チェックポイントが活性化しにくい細胞では分裂期にあまり蓄積せず、次の細胞周期へ進行することも明らかにしている。分裂関連細胞死は、分裂不全に陥った細胞を細胞死させることで染色体数の不安定化を避けるための防御機構であるが、紡錘体チェックポイントが活性化しにくい細胞では染色体数にどのような影響があるのか不明である。本研究では、紡錘体チェックポイントが活性化しにくい細胞におけるthio-DMA処理後の染色体数の変化を検討した。【方法】チャイニーズハムスターの肺由来繊維芽細胞V79は、紡錘体チェックポイントに関わるBubR1の発現レベルが低く、thio-DMAによって分裂期に蓄積しにくい特徴を持つ。この細胞を0.625、1.25および2.5 µMのthio-DMAで40時間処理し、染色体数の変化を調べた。また40時間処理後に通常の培地に戻して24時間から2週間培養を続けた細胞の染色体数の変化を調べた。【結果・考察】1.25 µMのthio-DMAで40時間処理したところ、正常な染色体数(21~22本)のピークが顕著に低下し42本付近にピークが現れた。このピークは2.5 µM処理時ではさらに増加した。thio-DMAで40時間処理後に通常の培地に戻して24時間培養したところ、1.25および2.5 µM処理群では、42本のピークが減少し、代わりに78~81本付近に新たなピークが出現した。81本付近のピークは通常の培地に戻して2週間後には減少したが、42本付近のピークは依然として観察された。以上の結果から、thio-DMAで処理したV79は細胞質分裂に失敗し、倍数性を引き起こす可能性が示唆された。さらに、通常培地に置き換えることで細胞質分裂に失敗した細胞の生存を可能にし、特に42本前後の染色体数を持つ細胞は、比較的長く生存し続けることが判明した。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713083024512
  • NII論文ID
    130007677306
  • DOI
    10.14869/toxpt.46.1.0_p-136
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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