沈降法によるセルロースナノファイバーの評価

  • 熊谷 明夫
    国立研究開発法人 産業技術総合研究所 材料・化学領域
  • 遠藤 貴士
    国立研究開発法人 産業技術総合研究所 材料・化学領域
  • 足立 真希
    株式会社レニアス 管理本部 開発室

抄録

<p>セルロースナノファイバー(CNF)の繊維径や繊維形態を評価する方法として,粒度分布測定法のひとつである沈降法に基づく解析手法が適用できるかどうか,その実用性の検証を行った。本研究では,評価対象として針葉樹漂白クラフトパルプの機械的な解繊処理過程で得られる一連の分散液を用いた。解繊処理過程で得られる分散液には,繊維径や繊維形態がバラエティに富む完全にナノ化されていないセルロース繊維が含まれている。CNFは完全にナノ化されたものばかりに注目が集まっているが,CNFの実用化を推進していく上では,解繊途中の特徴的な繊維形態をもつセルロース繊維の可能性を見出し,これらセルロース繊維もCNFと併せて活用していくことが重要になる。そこで,解繊途中のセルロース繊維も含めたCNF分散液の評価を検討した。</p><p>本研究では,沈降法に基づく分析装置として,重力沈降法に基づく液中分散安定性評価装置と遠心沈降法(DCS法)に基づくディスク遠心式粒子径分布測定装置を用いてCNF分散液の評価を行った。液中分散安定性評価装置を用いたCNF分散液の評価は,十分に解繊の進んだCNFの差異を評価することには適していなかったが,解繊途中のセルロース繊維については沈降挙動と繊維構造との間に相関が見られたことから,機械処理で製造するCNFの解繊状態を簡便に評価する方法として有用であることが判明した。一方,ディスク遠心式粒子径分布測定装置を用いたCNF分散液の評価で見積もられるストークス径と電界放出形走査電子顕微鏡で観察される繊維径との間に良い相関が見られ,CNF分散液中のセルロース繊維の繊維径分布を見積もる方法として有用であることが判明した。</p>

収録刊行物

  • 紙パ技協誌

    紙パ技協誌 73 (5), 470-477, 2019

    紙パルプ技術協会

参考文献 (15)*注記

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