吸気筋トレーニングが肥満者の肺機能および咳嗽能力に与える影響

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抄録

<p>【背景・目的】</p><p> 肥満者の呼吸機能は脂肪沈着部位に影響を受けるとされ, 特に腹部への内臓脂肪沈着は横隔膜の動きを制限すると言われている. また, 呼吸機能は姿勢の影響をうけ,座位に比べ仰臥位では腹部内臓器が押し上げられ, 横隔膜への抵抗が増加するとされている.今回,吸気筋トレーニング(IMT)が肥満者の肺機能および咳嗽能力に与える影響について姿勢変化を中心に検討したので報告する.</p><p> </p><p>【方法】</p><p> 対象はBMIが25以上である運動習慣のない肥満者19名(年齢:23.5±2.5歳,BMI:31.1±0.9)とし,ランダムにIMT群9名, 対照群10名に分けた. IMTはThreshold IMTを用いて,IMT群は最大吸気筋力(PImax)の30%負荷にて, 対照群は器具の最小負荷にて1日15分2セットを週3回実施し, 6週間継続させた. 測定項目はPImax, 最大呼気筋力(PEmax), 肺活量(VC), 咳嗽能力(CPF)とし,トレーニング前,開始後2・4・6週で測定した. VCおよびCPFについては, 座位から仰臥位への姿勢変化した際の変化率について検討した.</p><p> </p><p>【結果】</p><p> IMT群ではトレーニング4週以降にPImax,PEmaxの有意な上昇(P<0.05)を認めたが, 対照群では変化を認めなかった. 姿勢変化時のVCおよびCPFは両群においてトレーニングのいずれの時期も仰臥位の方が有意に低下していた(P<0.05). トレーニング6週でIMT群のVC低下率は有意に減少し(P<0.05), その低下率は対照群よりも有意に小さかった(P<0.05).一方でCPFは, IMTによる変化は認めず, 両群間の差も認めなかった.</p><p> </p><p>【考察・結論】</p><p> 肥満者の肺活量および咳嗽能力は姿勢の影響を受けやすく, 座位と比べ仰臥位では低下するが, IMTによって姿勢変化時の肺活量の低下率が改善することが示唆された. しかし, 咳嗽能力はIMTによる変化を認めなかった.肥満者は舌を含めて上気道の軟部組織も増えるため, 気道が狭くなるとされていることから, 咳嗽能力を改善するには, 吸気筋力を増強するだけではなく減量療法も併用していく必要性が考えられる.</p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は, 大学倫理委員会の承認を得て実施した. また, 対象者全員には口頭および書面により本研究の目的や方法, リスク等を十分に説明し, 事前に承諾を得た.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), A-58_1-A-58_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713087488256
  • NII論文ID
    130007692426
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.a-58_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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