脳卒中片麻痺患者の装具療法における介助歩行技術について
書誌事項
- タイトル別名
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- -立脚期における膝関節屈伸角度の違いに着目して-
説明
<p>【はじめに・目的】</p><p> 当院では、脳卒中片麻痺者に対し長下肢装具(KAFO)を使用した後方介助歩行練習を行う機会が多いが、後方介助歩行は理学療法士(PT)の技術が患者の歩容に大きな影響を与える。特にKAFOの膝継手を固定(膝ロック)した歩行練習から膝ロック解除した歩行練習に移行する場合に、介助するPTによりMSt以降の膝関節屈曲角度に大きな違いが生じることをよく経験する。そこで今回、KAFO膝ロック解除歩行における介助技術ついて検証を行ったため報告する。</p><p>【方法】</p><p> 当院でKAFO膝ロック歩行練習を行っている脳卒中片麻痺患者(下肢BRSⅢ)1名に対し、12名のPT(男性11名)が順番に介助歩行を行いそれぞれの歩容の違いを検証した。歩行条件はKAFO膝ロック解除し歩行補助具T-Supportを装着した状態での後方介助歩行とし、T-Supportの調整や介助方法は各PTに委ねた。計測はデジタルカメラ、リーフ株式会社製PiT、パシフィックサプライ社製Gait Judge Systemを使用し、膝関節角度、左右立脚時間比、足圧を測定した。膝関節角度はランドマークにマーカーを貼付し、デジタルカメラで撮影した動画を画像処理ソフトを使用して計測し、左右立脚時間比は麻痺側時間を非麻痺側時間で除した値とした。また、MSt~TStで膝関節屈曲角度が10°以下の5名(膝伸展群)と10°以上の7名(膝屈曲群)に分け、2群をMann-Whitney 検定を用いて比較し有意水準は5%とした。</p><p>【結果】</p><p> 膝屈曲角度は、IC17.2±6.8°、MSt18.3±13.2°、TSt12.5±10.8°、ISw39.8±13.4°、左右立脚時間比は0.78±0.11であった。2群における膝関節屈曲角度(膝伸展群/膝屈曲群)は、IC9.8±2.9°/22.4±2.6°、MSt4.2±1.9°/28.4±7.2°、TSt7.6±1.0°/16±13.0°、ISw26.8±6.5°/49.1±8.3°、左右立脚時間比は0.72±0.09/0.82±0.10であり、全ての膝関節屈曲角度で有意差が認められ、立脚時間比に有意差は認められなかった。足圧は、膝伸展群はICで踵部の圧が大きくその後前方へ移行するのに対し、膝屈曲群は立脚期全般で全足底に圧がかかり続けていた。</p><p>【考察】</p><p> 膝伸展群と膝屈曲群の2群間で、全ての時期で膝関節角度は有意差を認め、特にMSt・TStで標準偏差の数値に大きな差が認められた。膝屈曲群の足圧は常時全足底に圧が生じており、さらに全歩行周期を通して過度に膝関節が屈曲していることから、踵接地が消失しているためヒールロッカーが得られず、さらにMStに重心を上前方へ移行させるスムーズな重心移動を誘導できていないことが推察される。一方で、左右立脚時間比は膝屈曲群と膝伸展群に有意差がなく一定の傾向を示さなかった。これらより、膝ロック解除下での介助歩行における膝関節角度はPTの重心を上前方へ移行させるタイミングや介助量といった介助技術が大きく関与しており、さらには立脚時間比や歩行リズムを整えるだけでは十分とは言えないことが明らかとなった。今回の検証により介助歩行の理論や技術教育の重要性が示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言の趣旨に則り当院所属長の許可を得、対象者に口頭で説明し同意を得た。</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), E-174_2-E-174_2, 2019
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390845713087540608
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- NII論文ID
- 130007693014
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可