ボツリヌス療法と理学療法の併用

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  • -急性期例を経験して,その結果を踏まえた慢性期例-

抄録

<p>【はじめに・目的】</p><p> 脳卒中ガイドライン2015では上下肢痙縮に対するボツリヌス療法(以下,BTX)は強く推奨されている.</p><p> 今回,急性期・慢性期2例のBTX後のリハビリテーション(以下,リハ)を経験した.2例を通して,病期による理学療法・携わり方の違いを認識したので報告する.</p><p> </p><p>①60歳代 男性 左視床出血後16日BTX(ヒラメ筋50U,腓腹筋80U,後脛骨筋50U)</p><p>②60歳代 男性 右脳出血後12年  BTX(ヒラメ筋60U,腓腹筋60U×2)</p><p>【経過】</p><p>① 第17病日,右下肢Brunnstrom Recovery Stage(以下Brs.)Ⅲ,右足関節背屈可動域(以下,ROM)0°,Modified Ashworth Scale(以下,MAS)右下腿三頭筋2,歩行は長下肢装具を使用し介助が必要な状態であった.痙性抑制・機能改善を目的として神経筋電気刺激療法(以下,NMES),歩行能力向上を目的に装具療法を実施した.退院時,右下肢Brs.Ⅳ,右足関節背屈ROM10°,MAS右下腿三頭筋1,歩行はオルトップとT字杖使用にて自立となり,10m歩行16’30秒と動作能力向上を認めた.</p><p>② 腰椎圧迫骨折にて当院入院となり,back kneeが著明であったため歩容改善を目的にリハ医の判断でBTX実施となった.BTX前,左下肢Brs.Ⅲ,左足関節背屈ROM0°,MAS左下腿三頭筋2,歩行はダブルクレンザック継ぎ手付プラスチック装具(以下,PAFO)とT字杖を使用し軽介助レベルで10m歩行は32.8秒であった.BTX後翌日より痙性抑制を目的に起立台を使用した持続伸張とNMESを実施した.歩行訓練を進める中で,当初底屈5°背屈フリーであった足継ぎ手を底屈0°背屈フリーへと設定を変更しback kneeの改善を図りながら歩行訓練を実施した.退院時,左足関節背屈ROM5°,MAS左下腿三頭筋1+,歩行はダブルクレンザック継ぎ手付PAFOとT字杖を使用し自立レベルとなり,10m歩行は30.7秒であった.</p><p>【考察】</p><p> 急性期例は,早期に異常筋緊張を抑制した上で積極的に機能改善・ADL向上を目標に介入した結果,自宅復帰・現職復帰に至った.慢性期例は後遺症として残存した異常筋緊張を抑制し,異常筋緊張が阻害している動作をスムーズに行えるように,また圧迫骨折前より安全性を考慮したADLの獲得を目標に介入した.2例を通して,1)定着している動作の改善は時間を要し,本人の意識で大きく左右すること.2)個人因子・メンタル面がリハに大きく関与することを感じた.今回の経験を踏まえ,BTX後患者に対して身体機能・ADL向上に加え,QOL向上にも繋がるように関わっていきたいと考えている.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本発表は, ヘルシンキ宣言に基づき実施した. 説明は, リハビリ介入時に口頭および書面にて行い, 同意書への家族による署名をもって協力を得た. データ管理は, 匿名化処理を行い, 個人情報保護に十分配慮し実施した.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), E-181_2-E-181_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713087545344
  • NII論文ID
    130007693069
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.e-181_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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