誘因なく両側頭頂後頭葉出血を同時発症し,視覚認知障害を呈した1症例

DOI
  • 坂元 優太
    海老名総合病院 リハビリテーション科
  • 林 萌美
    海老名総合病院 リハビリテーション科
  • 金 誠熙
    海老名総合病院 リハビリテーション科
  • 湯田 健二
    海老名総合病院 リハビリテーション科
  • 笠原 隆
    海老名総合病院 リハビリテーション科

書誌事項

タイトル別名
  • -経過報告-

抄録

<p>【はじめに・目的】</p><p>誘因なく両側頭頂後頭葉出血を同時発症したことで,視覚認知障害を呈し,日常生活や様々な動作場面で障害が生じた症例を担当した.本症例の様な経過および介入についての報告は少ない.今回,急性期での経過の中で症状に改善がみられており,その経過とリハビリテーションの関わりをここに報告する.</p><p>【症例紹介】</p><p>70歳代,女性.両側頭頂後頭葉皮質下出血と診断され,保存的加療にて入院となった.</p><p>【経過】</p><p>介入当初より明らかな運動麻痺や感覚障害,協調運動障害は認めなかった.眼球運動は可能だが輻輳運動は困難であった.視野は対座法にて右側の視野狭窄が疑われた.また,視界がぼやけてはっきり見えないとの発言があった.Anton症候群は認めなかった.物体を掴もうとすると空間を空振り距離感や方向が分からない状況にあり,視覚性運動失調を疑う所見があった.また,1つの対象から他の対象に視線を動かすことや,2つの対象を同時に見ることが困難であり精神性注視麻痺や視覚性注意障害を疑う所見もあった.実際に,歩行場面で目標地点を決めて歩くと障害物が見えなくなり,衝突する場面があった.その他,枕の位置に合わせてベッドに横たわることが困難であり,視空間認知障害の所見もあった.これらの症状に対して,リハビリテーションでは,眼と手の協調的な訓練や環境と身体の適応訓練,体性感覚による代償手段の検討などを行った.当院入院中の約3週間の経過の中で,眼球運動は輻輳運動が改善した.右側の視野も拡大し,視界が広がったとの発言もあった.物体を掴む際には,空振りをほとんど認めなくなった.また,1度注視した対象から他の対象に視線を動かすことが可能となり,2つの対象を同時に見せても視線を動かし認識することが可能となった.歩行では,目標地点を決めても周囲に視線を動かしながら歩けるようになり,障害物に衝突することが減少した.また,枕の位置に合わせてベッドに横たわることが可能となった.</p><p>【考察】</p><p>経過とともに症状に改善がみられたのは,今回の発症が出血であり徐々に血腫が消退し自然回復したことによって,皮質盲の状態から視野が広がり、視空間認知が改善した可能性がある.その上で介入にて即時的に効果を認めた部分もあり,リハビリテーションによる視覚認知訓練や実際の動作場面での機能適応訓練を行ったことで,より改善がみられたのではないかと考えられる.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>ヘルシンキ宣言に沿って対象者および家族に発表を行うことに関して説明し同意を得た.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), E-214_2-E-214_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713087550976
  • NII論文ID
    130007693145
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.e-214_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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