急性期病院を退院した後、寝たきり状態となった認知症の大腿骨頸部骨折術後症例

DOI
  • 平田 裕也
    ケアブリッジ株式会社 訪問看護リハビリステーション かざぐるま鶴見 昭和大学医学研究科生化学講座
  • 阿澄 一志
    ケアブリッジ株式会社 訪問看護リハビリステーション かざぐるま鶴見

書誌事項

タイトル別名
  • ~現状の家具を用いた環境調整による転倒予防~

抄録

<p>【はじめに・目的】</p><p>在宅での大腿骨頸部骨折症例は、入院前と比較しADLや活動性が低下し、転倒を繰り返す症例や退院後に寝たきり状態になることを経験する。今後、高齢者人口が増加する中で、大腿骨頸部骨折後の在宅生活では、転倒することなく、またADLの低下を予防し、QOLが高い在宅生活の支援が重要と考える。そこで今回、大腿骨頸部骨折し自宅退院後に寝たきり状態となった症例に対する、訪問理学療法について報告する。</p><p>【方法】</p><p>(症例紹介)84歳、女性。要介護5。診断名:左大腿骨頸部骨折術後(ORIF)、認知症。夫、娘との3人暮らし。アパートの4階に在住、布団での生活、手すりは設置済み。現病歴:2015年4月、自宅近くを歩行中に転倒し受傷。救急搬送にてA病院を受診、大腿骨頸部骨折の診断でORIFを施行。術後3週時に、主治医より回復期病院への転院を勧められるも、ご家族の希望で自宅退院となる。数回、外来リハビリに通院するも徐々に通院回数は減り、退院5ヶ月後には寝たきり状態に。その状態で訪問看護が介入開始となった。</p><p>【結果】</p><p>(介入初期)HDS-Rは15点。FIM38/126点。布団からの起き上がり、立ち上がりは自力で不可能。全介助レベル。体位変換器のアスディス(モルテン)、タッチアップを導入。トイレまでの歩行は、娘が中等度介助にて実施。</p><p> (介入3ヶ月)FIM50/126点。体位変換器撤去。軽介助にて起き上がり、立ち上がりが可能に。また伝い歩きであれば歩行可能に。トイレまでの導線において、玄関部にフリースペースがあり、また高さのある棚を伝って歩き転倒傾向あり。家具の配置変換により、伝う棚を廊下の手すりの高さに合わせることによって安定して歩行可能に。</p><p> (介入12ヶ月)FIM73/126点。転倒はなく経過。自宅内のトイレは一人で行えるように。屋外歩行もT-caneにて軽介助にて可能。娘様と夫と3人でマンション外へ散歩に出ることもあり。</p><p> (介入25ヶ月)一度も転倒することなく、ご家族の希望でサービス終了。</p><p>【結論】</p><p>大腿骨頸部骨折術後の寝たきり状態であっても、週1回、訪問理学療法が介入することによって機能回復が可能であり、自宅内は自力にて歩行できるようになった。また認知症症例に対する転倒予防は非常に難しい課題である。本症例においては、敢えてベッドは導入せずに布団での生活を選択した。その結果、認知症によって自ら起き上がり歩行し転倒することのリスク回避ができたものと考える。また寝室からトイレまでの手すりがない箇所において、手すりと同じ高さになるように家具の位置を変更することにより、安定して歩行でき介入して2年間一度も転倒することがなかった。これらのことから、一例ではあるものの、大腿骨頸部骨折後の寝たきり症例に対する訪問理学療法の有用性、転倒しないために敢えてベッドを導入しない選択、また導線において手すりを同じ高さで環境調整することの有効性が示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に沿い、研究の目的や方法、個人情報の扱いについて十分な説明を行い、同意を得た。加えて、個人情報の取り扱いは当事業所の個人情報保護規定に則り実施した。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), G-72_1-G-72_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713087581952
  • NII論文ID
    130007693508
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.g-72_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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