人工膝関節全置換術後の膝関節固有感覚の経過について
説明
<p>【背景】固有感覚受容器が筋や腱,皮膚,関節包,靭帯など関節および関節周囲に多く分布している(Kennendy et al.;1982)ことは広く知られている.TKA後の固有受容機能についてTKA後は固有感覚受容器を切除されるために固有感覚機能が低下する(Pap et al.;2000およびFuchs et al.;1999)とされるが,一方でTKA後に炎症と痛みが改善することにより固有感覚機能は軽度に改善する(Swanik et al.;2004およびWada et al.;2002)とする報告もあり,一定の見解は得られていないのが現状である.</p><p>【目的】変形性膝関節症(KOA)により人工膝関節全置換術(TKA)を施行した患者の膝関節固有感覚の経過を明らかにしその要因について検討することを目的とする.</p><p>【方法】対象はTKAを施行した患者33名(男7名,女26名,33膝),神経疾患及び脊椎疾患,関節リウマチ患者は除外した.介入は術後翌日より起立・歩行練習を開始,早期よりLeg lunge等のCKC EXを施行した.評価項目としたKPはLepart(1996)らの方法に準じてBiodex System3(等速性運動装置)を使用し,設定値と実測値との差の絶対値を誤差角度とし3回の平均値を求めた.術前,退院時,術後2ヶ月(2POM)および3POMに測定した.統計解析は一元配置分散分析(p<0.05)を使用した.</p><p>【結果】KPは術前5.7±3.4°,退院時6.0±2.8°,2POM 5.0±2.2°,3POM 4.7±1.7°であった.退院時と3POMの間に有意差が認められた(p<0.05).</p><p>【考察】KPは退院時と比較し3POMに改善した.先行研究ではTKA後に炎症と痛みが改善することにより固有感覚機能は軽度に改善する(Swanik et al.;2004およびWada et al.;2002)とされており,本研究は同様の結果となった.しかしTKA後は固有感覚受容器を切除されるために術後における固有感覚機能が低下する(Pap et al.;2000およびFuchs et al.;1999)という結果とは一致しなかった.固有感覚に対する運動療法の影響について,標準的な運動療法は加齢による位置覚低下を軽減/回復することができる唯一の方法(Fernando et al;2010),KOAを対象として荷重位運動と非荷重位運動の膝関節覚における効果を検討し,荷重位運動は非荷重位運動より膝固有感覚が有意に改善したと報告(Mei-Hwa et al;2009)したとの報告がある.荷重下の運動は膝固有感覚によい影響をもたらすと考えられており,早期より荷重下で介入を行った本研究を支持していると考えられる.筋紡錘が関節位置覚に重要な役割を果たしている(Voight ML et al;1996)との報告もあり,これらを総括すると,浸襲によって関節包内組織は除去されてしまうが,TKAによって疼痛改善,変形矯正や膝関節滑動性が獲得されること,そして術後の活動性の向上に伴い関節包外組織に存在している多くの固有受容器の機能向上がKPの改善によい影響を与えたのではないかと考えた.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究はさいたま市立病院の倫理委員会にて承認を受け,十分な説明のもと同意の得られた患者を対象とした.</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-137_1-H2-137_1, 2019
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390845713087594880
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- NII論文ID
- 130007693656
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可