FABQを用いたメディカルスタッフ向け介助講習の効果検証
説明
<p>【目的】</p><p> Fear Avoidance Berief Questionnaire(恐怖回避思考質問紙、以下FABQ)は腰痛増悪に関与する心理社会的要因の評価バッテリーとして信頼性と妥当性が認められているが、FABQを用いて理学療法介入効果を検証した事例は未だ少ない。今回、当院所属のメディカルスタッフを対象とした患者介助講習の前後において、FABQを用いて介入効果を検証することを目的とした。</p><p> </p><p>【方法】</p><p> 対象はポスターにて公募し、当院リハビリテーション部主催の患者介助講習に参加を希望した診療放射線技師(以下Rt)24名、臨床放射線技師(以下Mt)27名の計51名の内、有効回答の得られた32名を採用した。除外基準は記載漏れがあった者、調査協力に賛同頂けなかった者、アンケート回収において講習前後いずれかに不備があった者とした。調査期間は講習開催日(2017年6月26日、7月24日)の各々前後1ヶ月とし、講習前後における勤務状況や講習満足度のアンケート調査に加え、FABQ身体動作スコア(以下FABQ値)を質問紙にて調査した。調査協力者を性別(男性群:11名、女性群:21名)、職種別(Rt群:15名、Mt群:17名)、講習前評価時の腰痛の有無(腰痛群:14名、非腰痛群:18名)、経験年数別(11年以下群:4名、11年以上群:28名)に分類した。それぞれのカテゴリーにおいて、講習前後でのFABQ値の差を比較した。また、腰痛群に対してはNRSにて安静時と労作時の疼痛の程度を評価し、同じく講習前後において比較した。統計手法は正規性検証のもとT検定を用い、正規性が認められなかった項目に関してはWilcoxonの符号順位和検定を用いた。有意水準は5%とした。統計ツールはIBM-SPSS-Statistics(バージョン23)を用いた。</p><p> </p><p>【結果】</p><p> 女性群、Rt群、非腰痛群の3カテゴリーにおいて、講習後にFABQ値の有意な低下を認めた。講習前後でのFABQ値の差の平均値と標準偏差は、それぞれ-2.7(4.5)、-2.5(4.0)、-3.4(4.5)であった。また、講習前後において腰痛群の安静時、労作時のNRSに有意差は見られなかった。</p><p> </p><p>【考察】</p><p> FABQ値をアウトカムに据えることで、特定のカテゴリーにおいて有意な変化を検出することができた。有意差を検出した3カテゴリーでは講習に対する満足度が比較的高く、患者との体格差が大きく患者介助に技術的な工夫を必要とする女性群、検査での患者介助量の多いRt群、講習でのアドバイスを即時的に実践可能な非腰痛群に対し、腰痛の予防的アプローチとして講習内容が効果的であったと考える。一方、現症として腰痛を抱えるスタッフに対しては十分な腰痛改善効果を認めることができず、今後講習内容の改善に加え、職場環境や教育システムを含めたより具体的な心理社会的アプローチの方法を検討する必要性が示唆された。</p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>演題登録と発表にあたり東京女子医科大学倫理委員会の承認を得た。(承認番号:4826)</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-97_1-H2-97_1, 2019
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390845713087632512
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- NII論文ID
- 130007694057
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可