超音波診断装置を用いて測定した腹横筋収縮時の胸腰筋膜画像の信頼性

DOI
  • 村上 幸士
    東京家政大学健康科学部リハビリテーション学科理学療法学専攻

抄録

<p>【はじめに、目的】近年、体幹深部筋群の一つである腹横筋の働きを解明するための研究が進められている。その腹横筋は、前方で腹部筋膜に、後方で胸腰筋膜に付着し、横断的な筋走行で腹部を取り囲むため、横隔膜、骨盤底筋群とともに腹腔内圧の変化に関与する。また、胸腰筋膜は、固有背筋(脊柱起立筋、横突棘筋など)を包む筋膜で、後葉は棘突起から、前葉は横突起から外方に伸びる。腰部では、固有背筋の外側縁で2葉が合わさり、腹横筋、内腹斜筋の起始腱になる。この胸腰筋膜が緊張することで、固有背筋の収縮時の筋断面積増加を押さえ込み、筋の「硬さ」と「強さ」を増加させると報告している。しかし、超音波診断装置にて高エコー像(白く写る)に描写できる筋膜を利用して、各筋を区別している骨格筋の測定は近年多く実施されているが、筋膜の変化に着目した報告は少ない。本研究では、腹横筋の収縮により変化の起こる胸腰筋膜前葉の測定を、二台の超音波診断装置を用いて安静時ならびに腹横筋収縮による筋膜変化時の信頼性を確認した。</p><p>【方法】 対象は健常成人男性30名。胸腰筋膜前葉の測定を一台目の超音波診断装置(GE Healthcare)のB-modeを用いて測定した。腹横筋のモニタリングおよび収縮・安静の確認には超音波診断装置(FUJIFILM)のB-modeを用いた。測定肢位は、 bed上腹臥位とし、腹部には高さに合わせたタオルを挿入した。まず、安静時は、通常呼吸を行い、呼気後を測定した。収縮時は、視覚的フィードバックとして二台目の超音波診断装置から得られた画像を利用し、腹横筋の選択的収縮を確実なものとした。その時点の胸腰筋膜前葉の測定を一台目の超音波診断装置を用いて行った。なお、測定は左右、さらにすべての過程を二回実施し、くじ引きで順不同にした。胸腰筋膜の測定は、 棘突起、横突起、腹横筋・内腹斜筋の起始腱を画像上の主な指標とし、 短軸像を抽出した。腹横筋の測定は、腹横筋・内腹斜筋の起始腱から筋腹を画像上の主な指標とし、 長軸像を抽出した。安静時と腹横筋収縮時に測定した超音波画像を動画で記録し、Win DVDを用いて、静止画像を抽出した。その後、Image Jを用いて、安静時と腹横筋収縮時の胸腰筋膜の位置を計測した。 統計処理は、1回目と2回目の測定に対し、級内相関係数ICC(1.1)を使用して、各測定値・計測値の検者内信頼性を全対象者に対し実施した。</p><p>【結果】 2回の測定・計測での級内相関係数ICC(1.1)の結果、安静時における左右胸腰筋膜位置の測定ならびに腹横筋収縮時における左右胸腰筋膜位置の測定に関して、Landisらの分類においてalmost perfect以上の相関がみられた。</p><p>【結論】 腹横筋は胸腰筋膜を介して脊椎の安定性に関与することから、深部に位置する胸腰筋膜の測定・計測は重要であった。今回、二台の超音波診断装置を用いることで、腹横筋の収縮に伴う筋厚増加と胸腰筋膜の位置を確認し、その信頼性を示すことができた。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】被験者にはヘルシンキ宣言に基づいて本研究の目的や方法などの概要、 本研究の参加によって生じる利益・不利益などを書面にて説明し、同意書への署名により研究協力の同意を得た。 本研究への参加は、 対象者の自由意思に従うものであることを十分に説明し研究中に参加拒否を示しても不利益が生じないことを説明した。 また、 得られたデータは紛失、 漏洩、 取り違え等を防ぐため、 厳重に管理し、 得られた個人的情報は氏名を記号等に置き換えて対応表を作成し、 連結可能匿名化した。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-126_2-I-126_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713087637504
  • NII論文ID
    130007694119
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-126_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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