運動課題の難度の違いによる学習とH反射の変化への影響

DOI
  • 浅井 直樹
    神奈川県立保健福祉大学保健福祉学研究科 神奈川リハビリテーション病院研究部リハビリテーション工学研究室
  • 鈴木 智高
    神奈川県立保健福祉大学保健福祉学研究科
  • 菅原 憲一
    神奈川県立保健福祉大学保健福祉学研究科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>運動学習と下位運動中枢の興奮性変化については一定の関係性が示されているが,学習の対象となる運動課題の難易度の相違に伴う運動学習とH反射の変化については明らかになっていない.本研究の目的は,難度の異なる同一運動課題を反復練習した前後におけるH反射の変化を検討することとした.</p><p>【方法】</p><p>対象は健常成人21例であった.難度の高い条件(難条件);高難度群と難度の低い条件(易条件);低難度群の2群に分け,各条件で平衡運動課題の練習を行った.平衡運動課題は,不安定板上に立位を取りモニター上に示されるドットの動きに合わせて不安定板の傾き(加速度計)を調整することにより追随することとした.不安定板は底部のパーツを付け替えることで2種類に難度を変えた.練習前後の評価として,両群ともに難条件と易条件の両課題のパフォーマンスを評価した.また,ヒラメ筋H反射の導出を課題遂行時に実施し,表面筋電図(僧帽筋,三角筋,腰部脊柱起立筋,腹直筋,外側広筋,大腿二頭筋,前脛骨筋,ヒラメ筋)計測を同時に行った.H反射導出は該当する各条件で行った.なお,H反射は膝窩部にて脛骨神経をM波閾値の1.2倍の強度で刺激した.刺激のタイミングはコンピュータプログラム(Labview)により重心の前方移動における同一時点に行った.結果の解析については,H反射と各筋電図は,練習前後と群間の2要因について二元配置分散分析によって検討した.パフォーマンスについては練習前後の変化比を算出し,群間と課題難度の2要因について二元配置分散分析によって検討した.なお,統計学的有意水準は5%とした.</p><p>【結果】</p><p>H反射については,有意な交互作用が認められ,練習後における群間,高難度群における練習前後に単純主効果が認められた.表面筋電図については,前脛骨筋において有意な交互作用が認められ,練習前における群間,練習後における群間,高難度群における練習前後に単純主効果が認められた.パフォーマンスの変化比については,有意な交互作用が認められ,易条件における群間,低難度群における課題難度に単純主効果が認められた.</p><p>【考察】</p><p>H反射の変化から,運動課題の難度の相違に伴って下位運動中枢の変化動態は異なることが考えられた.また,両条件間で前脛骨筋の活動は特異的な変化を示した.さらに,易条件でのみ学習の課題特異性が認められ,学習の達成度に対して課題の難度が影響していることが確認された.課題難度の相違により,学習の達成度は異なるとともに下位運動中枢のメカニズムが相違することが考えられた.この結果は臨床場面において,運動学習を図る場合にその課題の難度を十分に考慮する必要があることを示唆するものである.</p><p>【結論】</p><p>同一運動課題であってもその課題難度の相違により,運動学習前後での脊髄運動神経の興奮性は異なる変動動態を示すことが示唆された.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本症例に対する介入は神奈川県立保健福祉大学倫理委員会の承認のもと実施したものである(承認番号:保大第29-40).対象者にはヘルシンキ宣言に基づいて,本研究の概要について書面および口頭にて説明を行い,参加の同意を得た.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-121_1-I-121_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713087644416
  • NII論文ID
    130007694198
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-121_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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