脳卒中片麻痺歩行の2次元運動学的分析と快適歩行速度

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抄録

<p>【目的】</p><p> 歩行の運動学的分析は3次元動作解析装置が一般的に用いられる.しかし,臨床ではより簡便な方法が求められる.今回,比較的簡便に実施可能な歩行の2次元運動学的分析を行い,歩行速度との関連性を検討した.</p><p>【方法】</p><p> 対象は当院に入院した脳卒中者18名であった(年齢60.5歳、女性6名、発症から計測まで86.3日).取り込み基準は歩行補助具および装具なく10m以上の自力歩行が可能なものとした.歩行中の関節角度を計測するため,肩峰,大転子,大腿骨外側上顆,外果直下の踵骨,第5中足骨頭部に蛍光色の卓球ボールをクラフト粘着テープで貼付し計測マーカーとした.対象者は快適歩行速度で約16mの直線歩行路を2回歩行し,その様子を約5m離れた矢状面からスマートフォンを三脚に固定し撮影した(1080p×30fps).撮影した動画から,ImageJ(NIH)を用いて各マーカーの座標情報を抽出した.座標情報は計測ノイズを除去するためBryantのフィルタを用いて平滑化を行い,エクセルを用いて座標情報から股,膝,および足関節角度を算出した.算出した角度はエクセルのマクロを用いて100%に時間の正規化を行った.正規化した時間データからランチョ・ロス・アミーゴ式の歩行周期の分類を用いて0-10%をLR,10-30%をMSt,30-50%をTSt,50-60%をPSw,60-73%をISw,73-87%をMSw,87-100%をTSwと定義し,それぞれの相における股,膝,足関節最大屈曲(背屈)および伸展(底屈)角度と歩行速度との関連を相関分析を用いて検討した.統計解析はSPSS ver25.0を使用し,有意水準は5%とした.</p><p>【結果】</p><p> 対象者の歩行速度は中央値0.91m/sec,最大値1.46m/sec,最小値0.12m/secであり,0.4m/sec未満は2名,0.4~0.8m/secが4名,0.8m/sec以上が12名であった.歩行速度と関連の認められた歩行周期別関節角度は,麻痺側がMStの足背屈,TStの股伸展,PSwの股伸展,足底屈,ISwおよびMSwの膝屈曲角度であり,非麻痺側がPSwの膝屈曲,足底屈,ISwの膝屈曲角度であった(それぞれr=0.631, -0.566,- 0.543, -0.699, 0.587, 0.543, 0.542, -0.735, 0.569, すべてp < 0.05).相関を認めた変数の平均関節角度は麻痺側がMSt足背屈9度,TStの股伸展0度,PSwの股伸展2度,足底屈2度,ISwおよびMSwの膝屈曲58度および56度であり,非麻痺側がPSwの膝屈曲36度,足底屈3度,ISwの膝屈曲70度であった.</p><p>【考察】</p><p> 歩行補助具や装具なく自力歩行可能な対象者において,麻痺側のMStにおいて十分な足背屈(ankle rocker)があり,その後のTStおよびPSwで蹴り出し(push off)が生じ,そしてISwおよびMSwで十分な膝屈曲角度が得られること(stiff kneeが生じない)が歩行速度と関連したと考える.</p><p>【結論】</p><p>  比較的簡便に実施可能な2次元運動学的歩行分析においても歩行速度との関連を検討可能である.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>対象者には研究の概要,参加が任意であること,参加しなくても一切の不利益がないこと,いつでも参加撤回できること,個人情報の取り扱いなどを口頭および書面にて説明し,研究参加の同意を得た.</p><p> </p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-77_2-I-77_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713087654272
  • NII論文ID
    130007694311
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-77_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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