急性期病院における術後膠芽腫患者の転帰先に影響する因子の検討

DOI

抄録

<p>【はじめに・目的】</p><p>膠芽腫は極めて生命予後の悪い疾患である。膠芽腫患者は多様な神経症状を呈すること、脳浮腫によって障害範囲が広範囲となることや摘出術による後遺障害等によりADLが低下しやすい。一方、近年の治療の進歩により、膠芽腫患者の生存期間延長が期待されている。生命予後が限られた膠芽腫患者やその家族にとって、術後にADLを維持し自宅で生活することは一つの目標であり、ADL維持のためにリハビリテーション(以下リハ)の重要性が指摘されている。しかし、術後膠芽腫患者の転帰先や、膠芽腫患者のリハに関する報告は少ない。今回、当院の術後膠芽腫患者の転帰先と転帰先に関連する因子を後方視的に検討したので報告する。</p><p>【方法】</p><p>対象は2016年4月から2017年12月に当院に入院・手術し、リハを受けた膠芽腫患者21名(平均年齢66.9±11.9歳、男性7例、女性14例)。当該患者のカルテから転帰先と、転帰先に関連が予測される因子(年齢、性別、身長、体重、BMI、リハ実施期間、術前のアルブミン値、術前のGNRI、同居者の有無、術前・退院時の高次脳機能障害、運動麻痺、意識障害、嚥下障害の有無、術後離床までの日数、化学療法・放射線療法の有無、入院時・退院時Functional Independence Measure(以下FIM)、FIM利得)を調査した。転帰先は、自宅もしくは入院前に入居していた施設の場合を「退院」とし、各種医療機関の場合を「転院」とした。転帰と各因子間の相関関係をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した(p<0.05)。</p><p>【結果】</p><p>退院の患者は6名(29%)、転院の患者は15名(71%)であった。相関分析の結果、転帰先と有意な相関関係が認められたのは年齢(r=0.45)、術前のGNRI(r=-0.50)、術前の意識障害の有無(r=0.61)であった。</p><p>【考察】</p><p>本研究の結果から、年齢が若いこと、術前のGNRIが高いこと、術前の意識障害がないことが自宅退院の因子であることが示唆された。一般的に脳腫瘍のリハは脳卒中のリハに準じて実施されており、入院リハを実施した脳卒中患者の転帰先に関する先行研究でもこれらの因子が自宅退院に関連するという報告がある。我々の見解では、運動麻痺、高次脳機能障害、FIMといった因子が転帰先と関連があると考えていたが、結果は異なっていた。この理由として、本研究では運動麻痺や高次脳機能障害を有無で区別し障害の程度・種類を考慮していないこと、筋力や歩行能力等の身体機能・活動に関する因子、自宅環境や居住地、本人及び家族の意向等の環境・個人因子を検討していないこと、急性期病院の入院期間短縮により、治療が終了した時点でFIMやリハ効果によらず転帰先が決定されることが影響していると考えられる。膠芽腫患者のリハでは、本研究で転帰先と関連を認めた因子を考慮しながら自宅退院を目指した関わりが必要であり、今後はさらに調査項目や症例数を増やして検討し、膠芽腫患者に対するリハのEBMを確立していく必要がある。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に則った後方視的な研究である。データの取り扱いについては個人情報保護に十分配慮し、匿名化や厳重なデータ管理を行った。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), E-112_1-E-112_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713087917952
  • NII論文ID
    130007692911
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.e-112_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ