胸郭形状の左右非対称が肩関節前方挙上運動に及ぼす影響

DOI
  • 安達 亮介
    株式会社 東京リハビリテーションサービス 文京学院大学大学院 保健医療科学研究科
  • 小林 弘幸
    医療法人社団 靭生会 メディカルプラザ市川駅 リハビリテーション科 社会福祉法人 仁生社 江戸川病院 スポーツリハビリテーション
  • 小室 成義
    医療法人社団遼山会 関町病院 文京学院大学大学院 保健医療科学研究科
  • 柿崎 藤泰
    文京学院大学大学院 保健医療科学研究科

書誌事項

タイトル別名
  • -肩関節周囲筋の左右特性について-

抄録

<p>【はじめに】肩関節複合体の良好な状態を維持する一つの条件として、胸郭のアライメントは重要である。さらに胸郭形状には左右非対称性が存在し、肩関節の動きはその形状に依存した左右非対称性があると報告している。しかし、臨床上、胸郭のアライメントが悪化している例は多く、柿崎らは健常者においてもその傾向にあることを指摘している。今回は肩関節前方挙上運動における肩関節周囲筋の筋活動と胸郭形状の左右特性の関係性について検討したので報告する。</p><p>【方法】対象は健常成人男性16名(平均年齢28±3.3歳)とし、除外基準は脊椎や胸郭に著明な変形のある者、既往に肩関節疾患を有する者とした。測定機器は3次元動作解析装置と表面筋電図を用いた。動作課題は椅坐位にて左右片方ずつの上肢挙上とし、速度はメトロノームを使用して規定した。体表マーカー貼付位置は両肩峰、両肩甲骨棘三角及び下角、第7頸椎、第3・5胸肋関節及び剣状突起それぞれの左右中点 (A点) 、 A点を背面に投影した棘突起上の点 (B点) 、A点を通る水平線上に左右等距離に位置する点 (C点, 各3点) 、両上腕骨内・外側上顆、両橈骨・尺骨茎状突起、両上前・上後腸骨棘の計43点とした。筋電図電極貼付部位は三角筋、僧帽筋上部・下部線維、棘下筋、前鋸筋とした。胸郭前後径は各胸肋関節及び剣状突起レベルのB-C点間距離の総和にて定義し、左右比(右/左)を算出した。胸郭側方偏位は骨盤中心点に対する胸郭中心点のX軸座標にて定義した。肩関節挙上角度は胸郭に対する肩関節の角度にて算出し、肩関節周囲筋筋活動は各被験筋の最大随意収縮にて正規化した。いずれも計測は3回ずつ実施してその平均値をデータとして使用した。統計学的解析は、胸郭前後径左右比は95%信頼区間、胸郭前後径左右比と肩関節周囲筋筋活動、胸郭側方偏位量と肩関節周囲筋筋活動左右差にピアソンの積率相関係数を用い、有意水準は5%未満とした。</p><p>【結果】第3・第5胸肋関節レベルの胸郭前後径左右比は0.98(95%CI:0.97-0.99)で左胸郭の前後径が大きかった。右三角筋と側方偏位量の関係には前方挙上10°から80°の間で正の相関(r=0.45, p<0.05)が、左棘下筋と第5胸肋関節レベルにおける胸郭前後径左右比の関係には前方挙上60°から100°の間で正の相関がみられた(r=0.50, p<0.05)。</p><p>【結論】今回の検討では、胸郭形状は前後径と側方偏位において柿崎らの報告と同等であった。右三角筋には前方挙上10°から80°の間で側方偏位量の関係に正の相関が、左棘下筋には前方挙上60°から100°の間で第5胸肋関節レベルにおける胸郭前後径左右比との関係に正の相関がみられたことから、胸郭左側方偏位や胸郭前後径の左右非対称性による胸郭形状の変化は、肩関節挙上運動における肩関節周囲筋の筋活動にも一定の左右特性を生じさせる要因になっている事が考えられた。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は文京学院大学保健医療技術学部・大学院保健医療科学研究科倫理審査委員会の承認(2017-0036)を得た。ヘルシンキ宣言に基づき、各対象者に対して本研究の目的や方法などの概要、本研究の参加によって生じる利益・不利益、その他必要な事項を説明し同意を得た。本研究への参加は、各対象者の自由意思に従うものであることを十分に説明し実験中に参加拒否を示しても不利益が生じないことを説明した。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-232_2-H2-232_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713087991680
  • NII論文ID
    130007693845
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-232_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ