大腿骨近位部骨折術後患者における患側下肢荷重量に影響を与える因子の検討

Description

<p>【はじめに、目的】</p><p>先行研究において大腿骨近位部骨折術後の患側下肢荷重率は,歩行能力を規定する重要な因子であると報告されている.本研究では大腿骨近位部骨折術後患者の患側下肢荷重率に関与する因子を明確にし,術後急性期の大腿骨近位部骨折に対する理学療法の再考の一助とすることを目的とする.</p><p>【方法】</p><p>当院に大腿骨転子部骨折・大腿骨頚部骨折で入院し,リハビリテーション依頼のあった症例31名(女性20例/男性11例,平均年齢70.48歳,転子部骨折15例/頚部骨折16例)を対象とした.麻痺などの神経症状や重篤な合併症が認められる患者,急変によりリハビリテーションの継続が困難になった患者,重度の認知症(MMSE 24点以下)患者は除外とした.</p><p> 診療記録より性別,年齢,既往歴,受傷前歩行能力,骨折型,手術法を調査した.また,測定項目は患側下肢荷重量を体重で除した値(以下,患側下肢荷重率),荷重時の疼痛(最大荷重時,50%荷重時,80%荷重時),股関節周囲筋力(屈曲,伸展,外転,外旋),股関節可動域(外転,内転,伸展)とし,術後1週と2週に測定した.</p><p> 統計処理は患側下肢荷重率とそれぞれの測定項目との相関関係をSpearmanの相関係数を使用し,有意水準を5%未満とした.</p><p>【結果】</p><p>1週目の荷重時の疼痛(50%荷重,80%荷重)で負の相関,外転筋力で正の相関が認められた.2週目では荷重時の疼痛(最大荷重,50%荷重)で負の相関,股関節周囲筋力全項目で正の相関が認められた(r=±0.4〜0.7).</p><p>【結論(考察も含む)】</p><p>1週目では疼痛と外転筋力において相関関係が認められた.これは先行文献を支持するものであり,骨折部の安定性や股関節周囲の軟部組織の修復が術後1週目での患側下肢荷重率に影響すると考えられる.外転筋力に関しても先行研究から片脚立位動作に股関節外転筋力が関与すると言われている.その為,術後1週目までは疼痛管理に重点を置いた早期からの股関節外転筋力増強訓練が重要であると考える.</p><p> 2週目では疼痛と股関節周囲筋力全て(屈曲,外旋,外転,伸展)において相関関係が認められた.疼痛・股関節外転筋力に関しては1週目と同様の影響が考えられる.股関節の屈曲・外旋筋力に関しては股関節の安定性に関与している事が報告されており,この事が患側下肢荷重量に関与していると考えられる.また,股関節伸展筋力は骨盤の過前傾を制御し,股関節屈伸中間位での安定した荷重に関与していると考えられる.</p><p> 以上より,大腿骨近位部骨折患者においては術後1週では疼痛管理と早期からの外転筋力強化が,2週目では疼痛管理と股関節周囲筋の筋力強化が患側下肢荷重量増加へ寄与する可能性が示唆された.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究の実施に際して当院の倫理委員会の承認を得た.また,ヘルシンキ宣言に則り研究の趣旨,内容などに関して書面にて説明し同意を得た.</p>

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390845713088008448
  • NII Article ID
    130007694017
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-88_1
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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