心的歩行と実際歩行における運動イメージ誤差の抽出

DOI
  • 河井 陽介
    医療法人 公仁会 姫路中央病院 神戸学院大学大学院 総合リハビリテーション学研究科 医療リハビリテーション学専攻

書誌事項

タイトル別名
  • −心的時間測定およびテンポの測定による健常若年者と高齢者の比較−

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>歩行課題の運動イメージ研究では、心的時間と実際の時間を比較する方法が用いられているが、歩行時間だけでは人の歩行イメージを十分に捉えているとは言えない。歩行のリズムを表すケーデンスやテンポを用いた研究は、我々の知るところ見当たらない。我々の先行研究では健常若年者を対象とし、10m歩行の心的歩行と実際の歩行を、時間とテンポの2項目について評価し比較検討した。歩行イメージと実際の歩行は、時間一致性が見られた一方で、テンポは一致しない結果となった。本研究では新たに健常高齢者群を加え、健常若年者との比較検証を行なった。</p><p>【方法】</p><p>健常若年者21名(年齢24±2.12歳、男性9名、女性12名)、健常高齢者19名(年齢74±6.18歳、男性7名、女性12名)を対象とした。運動課題は10m歩行路を快適・最大速度の条件で1)心的に歩行する、2)実際に歩行するとし、時間(sec)とテンポ(bpm)を評価した。心的時間は歩行開始位置で被験者がストップウォッチを用いて測定し、実際の時間は検者によって各3回測定し平均値を採用した。心的のテンポ測定は、椅子座位で踵接地のタイミングで手を叩いて表現させ、ビデオカメラ(SONY社、HDR-CX370)を用いて記録後、QuickTime Player Ver.10.4を用いて解析した。なおテンポ×(身長/平均身長)で標準身長補正した。時間およびテンポの一致度は心的/実際の比率によって求めた。統計処理は対応のないt検定を用いた。有意水準は5%未満とした。</p><p>【結果】</p><p>時間一致度は、快適条件において若年群1.09±0.33、高齢群1.27±0.35で有意差は認めず(p>0.05)、最大条件においても若年群0.93±0.33、高齢群1.16±0.39で有意差は認めなかった(p>0.05)。テンポの一致度は、快適条件において若年群0.81±0.12、高齢群0.66±0.16で有意差を認め(p<0.05)、最大条件において若年群1.00±0.19、高齢群0.77±0.15で有意差を認めた(p<0.05)。</p><p>【考察】</p><p>10m歩行の心的時間は実際の時間と統計的に一致しており先行研究を支持している。一方で歩行テンポにおいては心的歩行と実際の歩行に一致性を認めず、時間よりもテンポの一致性を得ることのほうが難しい可能性を示唆している。北地らは「イメージの心的時間測定を用いた運動イメージと実際の運動における時間一致性を評価することで、対象者のフィードバック誤差学習を促進させる」としているが、歩行時間に加え、歩行リズムを表すケーデンスやテンポを用いて評価することで、歩行イメージをより的確に評価できることが示唆され、誤差学習をより促進させる可能性がある。今後、症例数を増やして検証するとともに、本知見を基に虚弱高齢者や各疾患患者を対象として臨床介入していく。</p><p>【結論】</p><p>心的歩行と実際の歩行の時間一致度の評価だけでは、人の歩行運動イメージを十分に捉えているとは言えない。歩行イメージにおいてケーデンスやテンポを用いて評価する事で、歩行イメージをより的確に評価できる可能性がある。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>全ての被験者に、実験前に目的、方法、リスクについて文書による説明を行い、署名による同意を得た。なお本研究は、神戸学院大学倫理審査委員会の承認を得た。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-83_1-I-83_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713088026368
  • NII論文ID
    130007694221
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-83_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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