後世の理学療法士に継承すべきボバース概念固有のものはあるか?

  • 北原 エリ子
    順天堂大学医学部附属順天堂医院リハビリテーション室

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  • ─大学病院で多職種協働アプローチを実践する理学療法士の視点から─

Description

<p> ボバース概念は,英国のボバース夫妻によって提唱された中枢神経に障害のある子どもや成人に対する治療の考え方である。1940年代に理学療法士(PT)ベルタ・ボバースが子どもの潜在能力を引き出すために,観察,治療の試行錯誤,推論を繰り返し,医師である夫カレル・ボバースと共に「子どもの異常で不規則な運動パターンを制御し,子どもが日常生活で用いている筋活動をどのように促通するか」という治療理論へと発展させた。1958年より英国ロンドンボバースセンターにて,本邦においては1973年より当時の聖母整肢園園長梶浦一郎医師と紀伊克昌PTによりボバース基礎講習会が開催された。その後,脳性麻痺児の臨床像変化,小児神経学や神経生理学の進歩とともに,分析・解釈・治療への応用について検討が繰り返され,姿勢制御・運動・機能の評価と治療という現代のボバース概念に変遷を遂げ,基礎講習会の内容も改編されてきた。</p><p> しかしながら近年のreviewにおいては,「ボバース概念/Neurodeveloplental Treatment(NDT)にはエビデンスがない。」と報告がなされ,2013年に発表されたNovakらによるreviewでは,様々な治療法の論文とNDTの論文を比較し,「NDTは最も効果がない治療」と記述された。これらの報告を受け,ボバースセンター前所長Margaret Mayston PTとボバース記念病院荒井洋院長は,それらの報告の背景にNDTの内容が古典的ボバースであることを指摘しつつも,「現代ボバースとは何なのか」という問題提起とともに,これからは治療アプローチとしての“ボバース”の名を捨て,小児脳障害に対する包括的治療として実践すべきではないかと提言している。またその一方でボバース概念に基づく個々の方法論が,真に有効かどうかの検証は行うべきであるとも提言している。</p><p> 私は当院で実践される脳性麻痺児に対する手術療法,装具療法,ボトックス治療等を含む多職種協働アプローチにおいて,リハビリテーション医,整形外科医,小児神経科医らとカンファレンスを重ね,PTとして姿勢制御・運動・機能の評価と治療および継時的変化を示す役割を担ってきた。その役割を果たすために求められる分析力と実践力は,私個人はカンファレンスでの討論とボバース講習会実技プログラムを通して研鑽してきたと自己認識している。シンポジウムではまず当院で実践している多職種協働アプローチとPTが果たす役割について紹介し,次に「後世のPTに継承すべきボバース概念固有のものはあるか?」「あるとすればそれはなにか? ハンドリング技術か? 教育プログラムか? 他か?」という問題提起をさせていただきたい。この学術大会シンポジウムにおいて,この問題提起をさせていただけることに感謝し,多くの方々と討論できることを期待している。</p>

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390845713088039808
  • NII Article ID
    130007694360
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.j-27
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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