地域在住高齢者のフレイルと関連する社会的因子の検討
説明
<p>【はじめに、目的】</p><p>地域在住高齢者におけるフレイル状態と関連する要因は、身体的要因を中心に検討されているものの、近年注目されている社会的要因との関連に関する研究はいまだ少ない。本研究は、地域在住高齢者のフレイル状態と健康と関連する種々の社会的因子の関連について明らかとすることを目的として行った。</p><p>【方法】</p><p>対象は2017年9月に実施した招聘型の調査測定会に参加した65歳以上の地域在住高齢者187人のうち、データに欠損のあった者、MMSEが23点以下であった者、要介護状態であった者を除いた157人とした。調査内容は、基本属性、Frailty Index for Japanese elderly(以下、FI-J)、社会的因子として、ソーシャルサポート、ソーシャルネットワーク、生活空間、閉じこもり傾向、社会参加、経済的状況、ソーシャルキャピタル、独居の有無、について、自記式質問紙調査を行った。さらに、身体機能評価として、握力と最大歩行速度の測定を実施した。FI-Jの合計得点から、3点以下をロバスト(非フレイル)群、4点以上をフレイル群として2群に分類した。統計解析はSPSS ver.22を使用し、群間の比較をχ2検定、Mann-WhitneyのU検定を用いて行った。なお、有意水準は5%とした。</p><p>【結果】</p><p>対象者全体の年齢は74.2±5.5(mean±SD)歳であった。ロバスト群(n=141)とフレイル群(n=16)の比較では、年齢(ロバスト群;74.0±5.3歳、フレイル群;76.4±6.8歳、p>0.05)、性別(男性の割合/ロバスト群;33.3%、フレイル群;56.3%、p>0.05)、教育歴(ロバスト群;13.1±2.0年、フレイル群;13.3±2.8年、p>0.05)、MMSEの得点(ロバスト群;28.3±1.7点、フレイル群;28.1±1.6点、p>0.05)に有意差はなかった。さらに、身体機能に関しても握力(ロバスト群;2.1±1.1kg、フレイル群;2.7±1.8kg、p>0.05)、最大歩行速度(ロバスト群;1.9±0.3m/sec、フレイル群;2.0±0.4m/sec、p>0.05)ともに有意差はなかった。社会的因子に関しては、閉じこもり傾向のみで有意に差があり、フレイル群では外出頻度が週一回以下で閉じこもり傾向の人の割合が多いことが示された(ロバスト群;0.0%、フレイル群;12.5%、p<0.05)。</p><p>【結論】</p><p>本研究により、地域在住高齢者がフレイル状態となる要因の一つとして、年齢や性別、身体機能状態などに差がなかったにも関わらず、閉じこもり傾向が関連することが明らかとなった。したがって介護予防においては、身体機能面だけでなく、定期的な外出を促すためのアプローチも視野に入れながらの実施が必要であることが再確認された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は、ヘルシンキ宣言に基づき、対象者の人権、個人情報などの保護、予想される危険には十分に留意して研究を進めた。対象者には事前に本研究の主旨、内容を説明し、書面による同意を得た上で調査・測定を実施した。なお、本研究は札幌医科大学の倫理審査委員会の承認(承認番号28-2-7)を受けて実施した。</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), C-139_1-C-139_1, 2019
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390845713088261632
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- NII論文ID
- 130007692655
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可