予防のためのウォーキングを推進するための工夫は?

DOI
  • 浦辺 幸夫
    広島大学大学院医歯薬保健学研究科スポーツリハビリテーション学研究室
  • 前田 慶明
    広島大学大学院医歯薬保健学研究科スポーツリハビリテーション学研究室
  • 笹代 純平
    広島大学大学院医歯薬保健学研究科スポーツリハビリテーション学研究室
  • 竹内 拓哉
    広島大学大学院医歯薬保健学研究科スポーツリハビリテーション学研究室
  • 利根川 直樹
    広島大学大学院医歯薬保健学研究科スポーツリハビリテーション学研究室
  • 福井 一輝
    広島大学大学院医歯薬保健学研究科スポーツリハビリテーション学研究室
  • 森山 信彰
    福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>スポーツ庁は、「スポーツの実施状況に関する2017年度の調査結果」で、週1回以上運動・スポーツをする成人の割合を51.1%としている。運動・スポーツは散歩を含むウォーキング(歩行)が突出している。生活習慣病の予防や介護予防の視点から、全世代が歩行に親しむことが推奨される。筆者らは、東日本大震災によって仮設住宅に避難した高齢者の歩行数が少ないことを示した(Moriyama N, et al. 2017)。一方、成人男性の平均歩数は約7,000歩、女性は約6,000歩である(平成28年国民健康・栄養調査)。今回、大学生がどの程度歩行しているかを示し、予防のためにウォーキングを習慣化するにはどのような工夫をすればよいか、考えたい。</p><p>【方法】</p><p>2013年からの5年間で、H大学の教養教育科目「健康スポーツ科学」を受講した1年生、480名を対象とした。講義開始時に全員に歩数計を配布し、約2~4か月間の歩行数を記録した。2017年からは、スマートフォンアプリ「SALKO」にも参加登録し、歩行数を記録した。講義の実施前後の歩数、終了後6か月後の継続率等を調査、比較した。</p><p>【結果】</p><p>講義開始時の平均歩行数は男性で3,900歩、女性で3,300歩だった。2か月後の講義終了時は男性で7,800歩、女性で6,400歩であった。6か月後にも「SALKO」を使用していた学生は、140名中12名であった。</p><p>【結論】</p><p>東日本大震災による仮設住宅在住の高齢者の歩行数は、男性で平均4,700歩、女性で4,200歩だったが、H大学の新入生はそれを下回っていた。一般に、歩行数は男性で20歳代が多く、女性では20~60歳代がほぼ等しいとされているが(平成28年国民健康・栄養調査)、若年成人にあたる大学生の歩行数が相当に少ないことが示された。「健康スポーツ科学」の講義では、ウォーキングが健康増進や疾病予防に大きな役割を果たすことを伝えることで、明らか歩行数が2倍近く増加することが確認できた。青少年に運動の重要性を説くことは、やはり必要なことと思われる。</p><p> しかしながら、講義の終了後には徐々に歩行数が減少し、6か月後に歩行を意識していたのはわずかの学生のみであった。「ウォーキング愛好者」への行動変容を定着・継続させるには、大きな困難があるようだ。</p><p> 内閣府の「青少年のインターネット利用環境に関する2017年度の実態調査結果」でネット利用時間は平均2時間39分としている。H大学の1年生の講義前の歩行数を時間で表すと男性で約40分、女性で30分程度である。自動車や電車での移動、座業が多いこと、引きこもりなどが歩行数の減少につながる。これに加え、ネット利用時間が極端に長くなっていることも次なる問題であろう。</p><p>【展望】</p><p> 1歩歩くことで、医療費低減効果は0.061円と計算されている(久野, 2015)。歩行数を増加させるためには、予防の教育は必要であるが、インセンティブやリワードといった利益を伴う政策が必要なのかもしれない。SALKOをはじめ全国でこのような試行が始まっている。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に則り、対象に書面と口頭にて説明を行い同意を得て実施した。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), C-70_2-C-70_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713088271488
  • NII論文ID
    130007692766
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.c-70_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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