HbA1cと心身機能との関連について

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  • -地域在住高齢者における検討-

抄録

<p>【はじめに、目的】糖尿病は狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患や脳血管障害のリスクファクターであり、将来の生活機能やQOLにも重大な影響を及ぼす。この糖尿病罹患の影響はこのような重篤な合併症が発生する以前より始まっており、例えば神経伝導速度や末梢神経の減少を呈する糖尿病性末梢神経障害(DPN) は比較的早期から起こることが知られている。また糖尿病患者の筋組成は非糖尿病者に比べ筋線維以外の非収縮組織が増加し、筋の質も変化する。したがって糖尿病罹患は神経・筋機能低下を引き起こすと考えられる。糖尿病における神経・筋機能低下は血糖値のコントロールに影響を受けるだろうが、地域高齢者で広く行われた調査はほとんど報告されていない。そのため地域高齢者において血糖値を反映するHbA1c値と心身機能に関連があるかについて検討することとした。</p><p> </p><p>【方法】当研究所で行っているコホート研究への初回参加者(2011~2016年)で糖尿病の有無の聴取とHbA1c値が得られた1,689名のうち、HbA1cが高値 (<5.7%) または糖尿病であると申告があった705名(男性309名/女性396名)を解析の対象とした。対象者にはインピーダンス式体組成計を用いて除脂肪体重、体脂肪率を、身体機能として握力、通常歩行速度、Timed up & go test (TUG)、片足立ち時間を測定した。認知機能の評価にはMini-Mental State Examination (MMSE)を用いた。医師の指示のもと看護師または検査技師が採血を行い、委託した検査機関に検体の分析を依頼しHbA1cを測定した。HbA1cと心身機能との関連を検討するために、まずHbA1cと各変数と単相関を観察した。その後、独立変数にHbA1c、BMI、除脂肪体重、体脂肪率、脳卒中の有無を投入し、従属変数を握力、通常歩行速度、TUG、片足立ち時間、MMSEとしたステップワイズによる重回帰分析を行った。性別、年齢については強制投入した。</p><p> </p><p>【結果】単相関分析では、HbA1cとの間にBMI(r=0.156, P<.001)、除脂肪体重(r=0.105, P=0.006)、片足立ち(r=-0.169, P<0.001)がそれぞれ有意に相関を認めた。重回帰分析の結果、握力(R2=0.633, HbA1c; B= -0.875, P=0.002)と片足立ち時間(R2=0.295, HbA1c; B=-4.184, P<0.001)のモデルで、それぞれHbA1cが独立した要因として抽出された。</p><p> </p><p>【結論】糖尿病に罹患している、あるいはその予備群と考えられる地域高齢者でも、HbA1cの上昇と筋力およびバランス能力の低下に関連があった。高血糖による神経・筋機能への影響は筋力やバランス機能に反映されるはずである。今回の結果はそれらの根拠のひとつとなると考えられる。特にHbA1c値と片足立ち時間とには強い関連があったことは、高血糖状態は神経系により強い影響を及ぼすことを示していると考えられる。糖尿病における血糖コントロールは、将来のサルコペニアやフレイルなどの虚弱状態への進展への予防のためにも重要である。</p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は東京都健康長寿医療センター研究所の倫理委員会の審査を経て実施された。調査にあたり、すべての対象者には口頭と書面による説明を行い、インフォームドコンセントを得た。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), C-57_1-C-57_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713088273024
  • NII論文ID
    130007692786
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.c-57_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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