地域在住高齢者の身体機能の特徴

DOI
  • 山口 育子
    東京医療学院大学 保健医療学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻
  • 内田 学
    東京医療学院大学 保健医療学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻
  • 丸山 仁司
    国際医療福祉大学大学院 保健医療学部 保健医療学専攻 理学療法学分野

書誌事項

タイトル別名
  • ~呼吸機能,呼吸筋力と運動耐容能の関連~

抄録

<p>【はじめに、目的】高齢者のフレイル予防や介護予防では,筋力や歩行速度に加え運動耐容能も重要な要素となる.しかし運動耐容能を規定する機能の一つである呼吸器系は,加齢に伴い器質的,機能的に低下する.実際,高齢者では呼吸器疾患の診断がなくとも疾患同等レベルの呼吸機能状態が高頻度に存在することが報告されている.そのため高齢者の運動耐容能の維持・向上を図るには,呼吸機能,呼吸筋力も視野に入れた検討が必要と考える.運動耐容能と呼吸筋力,呼吸機能との関連については,慢性閉塞性肺疾患などの有疾患患者でエビデンスが構築されてきたが,呼吸器系に疾患を持たない高齢者を対象とした報告は少なく明らかにされていない.そこで本研究は,高齢者の呼吸筋力,呼吸機能と運動耐容能との関連について検討した.</p><p>【方法】対象は呼吸器疾患を有さず歩行が自立した地域在住高齢女性60名(年齢85.8±5.6歳,要支援31名,要介護1,2 29名)とした.呼吸筋力の指標には最大吸気,呼気の口腔内圧(PImax,PEmax)を用い,呼吸機能として肺活量(VC),努力性肺活量(FVC),1秒量(FEV1.0),1秒率(FEV1.0%),最大呼気流速(PEF),運動耐容能の指標として6分間歩行テストの歩行距離(6MWD)を測定した。また,握力,膝伸展筋力,歩行速度と筋量を測定し,筋量からSkeletal Muscle Index(SMI)を算出した.握力と歩行速度の結果から運動機能低下群(低下群)と運動機能維持群(維持群)の2群に分け,各測定項目について群間比較を行った.また従属変数を6MWD,独立変数を膝伸展筋力,歩行速度,VC,PImax,PEmax,SMIとし,相関ならびに重回帰分析にて影響度を分析した.</p><p>【結果】対象者の筋量,筋力は年代別基準値と近似したが,呼吸筋力,呼吸機能と運動耐容能は予測値より低値を示した.群間比較では,身体組成やVC,FEV1.0%に有意差は認められなかったが,握力,膝伸展筋力,歩行速度,6MWD,PEF,PEmax,PImaxにおいて低下群が有意に低値を示した.6MWDと他の指標との関連は,全体では膝伸展筋力(r=0.29),歩行速度(r=0.60),VC(r=0.26),PEmax(r=0.25),PImax(r=0.26)が有意な相関を示し,重回帰分析の結果,選択された独立変数は歩行速度(β=0.60)であった.群ごとの分析では,低下群は膝伸展筋力(r=0.34),歩行速度(r=0.63),VC(r=0.55)が有意な相関を示し,選択された独立変数は歩行速度(β=0.49)とVC(β=0.36)であった.それに対し維持群では歩行速度(r=0.55)のみが有意な相関を示し,選択された独立変数も歩行速度のみであった(β=0.55).</p><p>【結論】高齢者の身体特徴として,筋量や筋力,歩行速度は維持されている一方で,呼吸機能,呼吸筋力,運動耐容能の低下が示唆された.さらに,握力や歩行速度が低下していく過程において,呼吸筋力も低下を示し,運動耐容能の関連因子として呼吸機能,呼吸筋力が影響することが示された.運動耐容能の維持には,呼吸機能,呼吸筋力を維持させる事の重要性が示唆された.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は国際医療福祉大学研究倫理審査委員会の審査を受け,承認(承認番号:16-Ig-91)を得たのちに実施し,すべての対象者に対して研究内容を十分に説明し書面にて同意を得た.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), C-95_1-C-95_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713088277760
  • NII論文ID
    130007692828
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.c-95_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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