トルーソー症候群患者の臨床的特徴

説明

<p>【はじめに・目的】</p><p>トルーソー(Trousseau)症候群は悪性腫瘍に伴う血液凝固能亢進によって血栓を形成し脳梗塞を呈する病態である。原疾患の進行による全身状態の悪化や、脳梗塞の悪化・再発により予後不良となる症例も散見され、目標や方針の決定に難渋することも多いものの、トルーソー症候群におけるリハビリテーション分野での経過を示した報告は少ない。そこで本研究はトルーソー症候群患者の臨床的特徴を検討することを目的とした。</p><p>【方法】</p><p>2016年4月から2017年3月の期間中、当院脳卒中センターに入院し、トルーソー症候群または疑いと診断された患者6名を対象とした。年齢、性別、脳梗塞病変部位、悪性腫瘍の種類、治療内容、転帰、再発の有無、発症から死亡までの日数、D-dimer値、modified Rankin Scale(以下mRS)、National Institutes of Health Stroke Scale (以下NIHSS)、Glasgow Coma Scale(以下GCS)、Stroke Impairment Assessment Set(以下SIAS)、Function Independence Measure(以下FIM) について検討を行った。</p><p>【結果】</p><p>平均年齢は78.5歳(73~83歳)であり、男性3例、女性3例であった。病変部位は両側大脳半球に多発が4例、深部白質、左分水嶺領域に多発が1例、左中大脳動脈M2分岐閉塞1例であった。合併する悪性腫瘍の種類は、膵癌2例、肺がん、胃がん、腹部腫瘤、子宮癌が各1例であった。治療はヘパリン持続点滴に各種脳保護液が併用された。転帰は自宅退院が2例、回復期病院転院が1例、死亡退院が3例となった。現在も生存されている1例を除き、発症から死亡までの日数中央値は27日であった。入院期間中の脳梗塞の再発や悪化があったのは4例で、うち3例は死亡退院となった。</p><p>以下の数値は中央値で示す。D-dimer値は6.85、mRSは発症前2、入院時5、退院時5。入院時NIHSS12.5、GCS12点、リハビリテーション開始時のSIASは52.5点、FIM35点であった。生存のまま退院・転院となった3例の最終SIASはそれぞれ76、75、63点、FIMは110、80、44点であった。</p><p>【考察】</p><p>D-dimer値が高値であったこと、また4例は静脈血栓症も併発しており、血液凝固亢進状態であったことが示唆された。麻痺の程度は軽度から中等度であり、状態悪化がなければ回復期病院でのリハビリテーション継続が適応となる例が多かった。軽症例は自宅退院可能であったが発症後の生存期間は長くない。今回死亡退院となった3例は、悪性腫瘍原発巣の悪化ではなく、脳梗塞を繰り返して全身状態が悪化したことが直接的な原因となっていた。トルーソー症候群を発症すると予後不良となる例も多く、また生存期間が短くなる可能性があるため、療養先や家族と過ごす時間などに留意することが必要だと考えられる。また、今回の研究では症例数が少ないためより多くの症例での検討が今後必要となる。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>すべての情報は通常の診療行為の過程で得られたものであり、今回の報告にあたってはヘルシンキ宣言に準じ、個人情報の流出防止、匿名性の保持を厳守した。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), E-156_2-E-156_2, 2019

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713088294656
  • NII論文ID
    130007692988
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.e-156_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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