特発性側弯症に対する運動療法

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  • ─シュロス法─

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<p> シュロス法は,1921年にドイツのカタリナ・シュロスが自身の側弯症を修正するために考案され,その後確立された側弯症に対する運動療法である。ドイツにおいてシュロス法は,側弯症の保存的治療の中で最も認められる運動療法として発展し,近年では経験的治療でなく治療効果のエビデンスも示されてきている。シュロス法はドイツだけでなく,ヨーロッパを中心に,アジア諸国でも指導されており,本邦でも2014年より理学療法士のみを対象に指導を開始し,現在までに約100名のシュロスセラピストが登録されている。</p><p> </p><p> 本邦における特発性側弯症における学校検診は,平成28年より導入された運動器検診の中に含まれるアダムス前屈テストや肩甲骨,骨盤の傾斜を観察し,側弯症を発見する項目がある。しかし,学校検診でも見逃されることがあると報告されている。側弯症は,報告者により差はあるものの約1~2%の有病率を有しており,そのうち特発性側弯症が80-90%を占め,10-20%は先天性や神経原生,神経筋性などが病因である。特発性側弯症は自覚的な身体症状がみられることは稀であるが,姿勢異常により足部や膝,肩といった四肢にも二次的な障害が生じることもある。また,加齢やライフスタイルの変化,妊娠出産,体重の増加等により脊柱の変性が生じ様々な症状を呈することもある。特発性側弯症の原因は諸説あるものの未だ不明であり,有効な治療として装具療法と手術療法が行われており,軽度なものでは経過観察が行われている。</p><p> </p><p> 理学療法士が行う運動療法は,本邦において明確な治療効果が示されておらず特発性側弯症に対して運動療法を施行することは少ないが,近年シュロス法の効果が示されている。Kuruらは,理学療法士の指導の下,6週間シュロス法を行う(週3回,1回1.5時間)ことで,コブ角‒2.53°,回旋角度‒4.23°の改善がなされたと報告している。また,Kwanらは,装具着用中に,シュロス法を併用して約18ヵ月行うことで,患者の17%(コブ角が6°以上)で改善し,21%(コブ角が6°以上)が悪化し,62%で安定していた。対照群では,4%が改善され,50%が悪化し,46%が安定したままであったとしている。このように,国外では徐々に効果は示されており,日本でも症例報告として報告されてきている。</p><p> </p><p> シュロス法における側弯症として捉える角度は,Cobb角10°以上としている。しかし,Cobb角は前額面での椎体の傾きを計測した角度であるため,常に前額面での側屈,矢状面での前後弯,水平面での回旋といった三次元での脊柱の変位をとらえる必要がある。前額面では,胸部の右凸,腰部左凸の側弯が非常に多く,この時,水平面では胸部右回旋,腰部左回旋となる。また,矢状面では,腰部前弯と胸椎後弯がともに減少し平背となる。しかし,腰椎と仙骨の連結部のみ前弯が増大する。このように,各部における三次元的に相反する姿勢となる。この側弯症の姿勢の特徴を正確に評価し把握することは非常に重要である。そして,患者自身が脊柱の側弯変形の状態を認識し,修正された正常な姿勢を理解させる。さらに,その修正された姿勢を日常生活の中で常に意識し,またトレーニングを行い,修正された姿勢を保持できる静的・動的な姿勢の調整と安定性を獲得する。その結果,側弯症の進行を遅らせ,または手術を回避することが大きな目的である。特徴は,頭部から下肢までを4つのブロックに分け,それぞれの変位を三次元的に観察し側弯症をいくつかのタイプ別に分類し,それぞれに適応となる特異的な運動や呼吸を利用した三次元的な変形の修正エクササイズにある。また,他動的な関節や軟部組織モビライゼーションや,セルフエクササイズ,日常生活指導も含めて行う。</p><p> </p><p> 今回は,特発性側弯症の運動療法であるシュロス法の実際について,理論を交え紹介する。</p>

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390845713088341888
  • NII Article ID
    130007693567
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h1-31
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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