HIF-1α阻害薬投与と電気刺激による周期的な単収縮運動を併用した治療戦略がラットヒラメ筋の筋性拘縮におよぼす影響

DOI
  • 梶原 康宏
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 保健学専攻 理学療法学分野
  • 片岡 英樹
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 医療科学専攻 理学療法学分野 社会医療法人 長崎記念病院 リハビリテーション部
  • 本田 祐一郎
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 医療科学専攻 理学療法学分野 長崎大学病院 リハビリテーション部
  • 田中 なつみ
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 医療科学専攻 理学療法学分野 長崎大学病院 リハビリテーション部
  • 坂本 淳哉
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 保健学専攻 理学療法学分野
  • 中野 治郎
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 保健学専攻 理学療法学分野
  • 沖田 実
    長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 医療科学専攻 理学療法学分野

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p>これまでわれわれは,筋性拘縮の主病態である骨格筋の線維化の発生メカニズムの一端に不動によって惹起されるhypoxia-induced factor(HIF) -1αの発現亢進が関与することを明らかにしてきた.また,阻害薬投与によりHIF-1αの発現亢進を抑止すると,骨格筋の線維化ならびに関節可動域(ROM)制限の進行が抑制されることを報告してきた.一方,HIF-1αの発現亢進を抑止する理学療法の一つに筋ポンプ作用を促す周期的な単収縮運動があるが,軽度の筋性拘縮がすでに発生している不動2週後から開始しても線維化の進行抑制効果は認められないとされている.つまり,拘縮が進行した段階から介入を開始しても臨床成績は良好とは言い難く,これを打開する戦略として薬物療法と理学療法の併用が考えられる.そこで本研究では,不動開始直後からHIF-1α阻害薬投与といった薬物療法を先行して実施し,その後,電気刺激を用いた周期的な単収縮運動の実施といった理学療法を併用して行うことがROM制限や骨格筋の線維化の進行にどう影響するのかを検討した.</p><p>【方法】</p><p>8週齢のWistar系雄性ラット25匹を無処置の対照群と両側足関節を最大底屈位の状態で4週間ギプスで不動化する実験群に分け,実験群はさらに1)不動処置のみの不動群,2)不動2週後より電気刺激を実施する刺激群,3)不動開始直後からHIF-1α阻害薬投与を行い,さらに不動2週後より電気刺激を実施する併用群に振り分けた.HIF-1α阻害薬にはYC-1を用い,2mg/kgの用量で不動期間中,毎日腹腔内投与した.また,電気刺激装置にはtrio 300(伊藤超短波製)を用い,リード線付表面電極を下腿三頭筋に貼付した状態でギプス固定し,ギプスを装着したまま周波数10Hz,パルス幅250µsec,刺激強度10mA以下の条件で1日30分,週6回,周期的な単収縮運動を誘発した.そして,実験期間中は足関節背屈のROMを毎週測定し,拘縮の進行状況を評価した.また,実験終了後は採取したヒラメ筋を生化学的検索に供し,HIF-1α発現量およびコラーゲン含有量を測定した.</p><p>【結果】</p><p>ROMは実験群の3群とも不動1週以降,対照群より有意に低値を示し,不動期間の延長に伴って減少が認められた.また,実験群間で比較すると不動3週以降,併用群が不動群,刺激群より有意に高値を示した.HIF-1α発現量は実験群の3群とも対照群より有意に高値を示したが,実験群間で比較すると併用群が不動群,刺激群より有意に低値を示した.また,コラーゲン含有量は実験群の3群とも対照群より有意に高値を示したが,実験群間で比較すると併用群が不動群,刺激群より有意に低値を示した. </p><p>【結論】</p><p>以上の結果から,不動開始直後からHIF-1α阻害薬投与といった薬物療法を先行して実施し,その後,電気刺激を用いた周期的な単収縮運動の実施といった理学療法を併用して行うといった治療戦略は骨格筋の線維化の進行を抑制し,筋性拘縮の発生予防に効果的であることが示唆された.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は,長崎大学動物実験委員会の承認を受けた後,同委員会が定める長崎大学動物実験指針に準じ,長崎大学先導生命科学研究支援センター・動物実験施設で実施した.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-111_2-I-111_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713088393472
  • NII論文ID
    130007694100
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-111_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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