タブレットセラピーにおける観察動画の最適な再生速度の検討

DOI
  • 小菅 勘太
    医療法人財団 報徳会 西湘病院 リハビリテーション科
  • 米本 竜馬
    茅ヶ崎リハビリテーション専門学校 理学療法学科

抄録

<p>【はじめに、目的】ミラーセラピー(以下MT)は運動麻痺の回復や運動学習に効果的であることは多数報告されている.一方MTの鏡の代わりにタブレットを用いて動画を観察するタブレットセラピー(以下TT)にも同様の効果があったという報告がある.また,観察する動画の再生速度を変化させることが運動学習に影響を及ぼすという報告もある.しかし,どの再生速度が最も効果的であるということは明らかではない.そこで,我々はTTにおける最適な動画の再生速度を明らかにすることを目的とした.</p><p>【方法】対象は右利きの健常成人男性29名(19.8±2.2歳)と女性16名(20.3±1.9歳)とした.運動課題をコルクボール回しとした.介入内容は,実験参加者の右手での運動課題を撮影した後,それを左右反転した動画の観察を行った.動画観察と休憩,各30秒を1セットとし,1日10セットを合計8日間行った.計測項目は左手での30秒間の回転数とした.介入群として観察用動画の再生速度が異なる4群(高速群:1.5倍,通常群:1.0倍,低速群:0.75倍,静止群:静止画の観察)を,対象群として動画を観察しない非介入群を設定した.実験期間は26日間とし,前半12日間を介入期間, 後半14日間を非介入期間とした.初日(初回),12日目(中間),26日目(最終)に回転数の計測を行った.まず,各群内での運動学習の有無を確認するために,各群内で独立変数を計測タイミング(初回,中間,最終),従属変数を回転数として1元配置分散分析で比較した.次に,最適な条件を明らかにするために,有意な回転数の上昇があった(運動学習があった)群の間で独立変数を動画の観察条件(高速,通常,低速,静止,非介入)とし,従属変数を回転数の変化率(初回と中間の変化率を即時効果,初回と最終の変化率を学習効果)として1元配置分散分析で比較した.有意水準は5%未満とした.</p><p>【結果】各群内での回転数の比較において,全群で初回計測と最終計測の間に,高速群,通常群,低速群の3群で初回計測と中間計測の間に有意な回転数の上昇があった.各群間での変化率の比較において,即時効果,学習効果ともに有意差はなかった.</p><p>【考察】回転数に関して,最終計測で非介入群でも有意な上昇があったことから,2回の計測時の運動課題実施が運動学習に影響があったことが考えられる.しかし,中間計測では動画観察を行った3群にだけ有意な上昇があったことから,動画観察はより早い時期での運動学習を促す可能性が考えられる.一方,変化率の群間比較において有意差はなく,最適な再生速度を明らかにすることはできなかった. 先行研究には,観察する動画を熟練者と非熟練者としたものもある.再生速度という量的な要因だけではなく,動作の滑らかさなどの質的な要因も今後検討していきたい.</p><p>【結論】動画を観察することは早期の運動学習を促す可能性は示唆されたが,最適な再生速度を明らかにすることはできなかった.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】この研究は,ヘルシンキ宣言に基づき,実験前に以下の事項に承諾をした実験参加者のみを対象とした.実施計画への参加は任意であり,同意後もその撤回は可能であること.また,同意しないことにより,不利益を受けないこと.許可を得たデータのみ開示され,本人から請求があれば当該データを渡すこと.同意を撤回した場合提供されたデータ等は破棄されること.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-81_2-I-81_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713088397824
  • NII論文ID
    130007694216
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-81_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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