片脚立位時における上肢への重錘負荷が中殿筋前部線維、中部線維の筋活動に及ぼす影響について

  • 松本 浩希
    地方独立行政法人 市立吹田市民病院 リハビリテーション科
  • 加納 一則
    地方独立行政法人 市立吹田市民病院 リハビリテーション科

書誌事項

タイトル別名
  • ~変形性股関節症患者と健常者における比較~

説明

<p>【はじめに、目的】中殿筋は解剖学的構造より前部・中部・後部線維に分けられ、各線維の機能が異なる可能性がある。中殿筋の活動を線維別に調査した報告は少なく、健常者と股関節疾患患者の差異については明らかになっていない。今回、片脚立位時(以下、OLS)の中殿筋各線維の活動が変形性股関節症患者(以下、股OA患者)と健常者に違いがあるか表面筋電図を用いて調査することを目的とした。</p><p>【方法】対象は、片側股OA患者9名(全例女性、57.7±8.7歳)と健常者9名(男性:8名、女性:1名、23.3±1.9歳)とした。</p><p>方法は、OLS時、肩外転90°で体重の5%の負荷を立脚側、遊脚側上肢遠位へそれぞれ加えたOLS時(以下、立脚側負荷OLS、遊脚側負荷OLS)の中殿筋前部・中部線維の筋活動量を、表面筋電図(NORAXON社製Myosystem1200)を用いて測定した。測定側は股OA患者がOA側、健常者は右側とした。各線維の電極設置位置は池添らの方法に準じた。各OLS時の筋電波形を整流平滑化処理し、波形の安定している3秒間の積分値を求めた。OLS時の波形を100%difference とし、立脚側負荷OLS、遊脚側負荷OLS時の%differenceの値を求めた。股OA群、健常群間の各肢位に対応する前部線維と中部線維の比較は対応のないt検定、群内における各肢位の前部線維と中部線維の比較は対応のあるt検定を用い、有意水準は5%とした。</p><p>【結果】中殿筋活動量を(前部線維/中部線維)の順に記載する。健常群は立脚側負荷OLS時(81±27.6%/99.5±26.2%)、遊脚側負荷OLS時(124±36.2%/132.6±36.9%)であった。股OA群は立脚側負荷OLS時(69.4±29.8%/71.1±31.6%)、遊脚側負荷OLS時(125.1±32.5%/122.6±29%)であった。群間の比較では有意差を認めず、群内の比較では健常群遊脚側負荷OLS時にのみ有意差(p=0.049)を認めた。</p><p>【考察】本研究の結果、群間の比較では有意差を認めなかった。これは各線維において股OA群でも健常群と同様の変化が生じたものと推測した。群内の比較で健常群遊脚側負荷OLS時に有意差を認めたのは、重錘負荷により中殿筋の筋活動量が増加し、各線維の機能的な役割が強調されたものと推測した。股OA群で有意差を認めなかったのは、機能分化の破綻が生じたものと推測した。立脚側負荷OLS時に有意差を認めなかったのは中殿筋機能の必要性が低下し、筋全体としての活動量が低下したためと考える。本研究の限界として、対象者数が少ないこと、股OA群の骨盤股関節のアライメントを評価できていないことが挙げられる。今後、対象者数を増やしアライメントとの関係も考慮して再検討する必要がある。</p><p>【結論】股OA群の中殿筋各線維は健常群と比較し、機能分化の破綻が示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】今回の調査は、ヘルシンキ宣言の規定に従い実施し、研究の趣旨、測定の内容、個人情報の取り扱いに関して説明を行った上で研究協力の承諾を得た。また、対象者がどのような判断をしようとも結果に関して不利益も被らないこと、一度、承諾した研究への協力についても、無条件に途中で中止できることも併せて説明を行い同意と了承を得た。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-63_2-I-63_2, 2019

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713088401408
  • NII論文ID
    130007694251
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-63_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ