介護予防事業終了後の自主グループへの参加がフレイルおよび心身機能へ与える影響
抄録
<p>【はじめに、目的】要支援・要介護に陥るリスクの高い高齢者に対する介護予防事業が、心身機能や生活機能向上をもたらす報告は数多くされているが(加藤ら,2013など)、事業終了後に自主グループなどで介護予防の取り組みを継続していくことも重要である。しかし、事業終了後の自主グループへの参加状況や、参加と心身機能の関連性に着目した研究は極めて限られている。そこで本研究は、自治体が実施した事業終了者へのアンケート調査をもとに事業終了後の自主グループへの参加がフレイルおよび心身機能へ与える影響を明らかにすることを目的とした。</p><p>【方法】本研究では、平成27・28年に東京都A区が一般介護予防事業参加者に対して、事業開始3ヶ月後(以後、T1)と介護予防事業終了6ヶ月後(以後、T2)に実施した自記式アンケートを分析した。回答を得られたのは229名(男性:67名、女性:162名、年齢:65-91歳)であった。T2で聴取した介護予防自主グループへ所属している者を所属群、所属していない者を未所属群とし、T1、T2におけるフレイルの該当、基本チェックリストの合計点、主観的健康感の変化を両群で比較した。フレイルの該当には基本チェックリストを用い、合計点が4点以上をフレイル、4点未満はロバストとした。基本チェックリストの合計点は2要因の分散分析を用いて比較し、多重比較にはボンフェローニ法を用いた。それ以外の評価項目は、Wilcoxonの符号付き順位検定またはMcNemar検定を用いて危険率5%未満で比較した。</p><p>【結果】所属群は119名(52.0%)、未所属群は110名(48.0%)であった。フレイルの人数は、所属群(T1:68名、T2:72名)、未所属群(T1:82名、T2:77名)いずれもT1、T2で有意な変化は認められなかった。一方、基本チェックリストの合計点および主観的健康感の点数は、両群ともにT1よりT2の方が有意に高かった(p<0.05)。</p><p>【結論】本研究では、事業終了者の半数以上が自主グループへ所属していた。本研究におけるフレイルの該当者数はShimada et al.(2013)と比べて大きな差は認められず、対象者におけるフレイルの有症率は一般的な地域高齢者と同等であったと考えられる。これらのことから、地域高齢者に対して事業をきっかけに半数以上を自主グループへつなげられる可能性が示唆された。しかし、両群ともに事業終了6か月後には基本チェックリストの合計点および主観的健康感の点数が増加し、自主グループへの所属の有無に関わらず心身機能は悪化していた。今後、心身機能の維持・向上に効果的な活動内容や頻度などの詳細な分析が必要であると推察された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は、対象者からアンケートの研究への活用について、書面にて同意を得て実施している。</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), C-150_1-C-150_1, 2019
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390845713088642304
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- NII論文ID
- 130007692628
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可