演習授業の学習が身体的活動の向上に与える影響について

説明

<p>【はじめに】</p><p>PNF(propricoceptive neuromuscular facilitation;固有受容性神経筋促通法)は,固有感覚受容器に刺激を与え神経,筋細胞の興奮などを利用し,神経,筋出力等の促通と抑制に働きかけることが出来ることなど覚醒効果が認められると報告されている。これらの理論をもとにGellrorn らの生理学的事実を引用・理論化し,knott,Voss らによって具体的手技が加えられたものがPNF 運動療法である。PNF はその肢位の主な作用が努力,容量,注意といわれる非特異的な覚醒効果であるとするならば,PNF の演習を受講している学生は反応時間に少なからず影響を及ぼすと考えられる。本研究は学生のPNF 演習授業を受講している者(以下LG)と,非受講者(以下CG)の間ではPNF 肢位に対する自覚性が異なるため意識や注意である非特異的な入力量に差が生じ,反応時間に変化をもたらすのではないかと考えた。今回学習により生じた自覚の違いによる非特異的な入力量の変化が反応時間に及ぼす影響を検証するため,CG とLG の基本肢位とPNF 肢位の筋電図反応時間を測定し両者の反応時間とその差分を検討することを目的とした。</p><p>【方法】</p><p>対象者;理学療法専攻に在学しており,本研究を説明し理解を得られた右利きの学生76 名,受講3 年生と非受講1 年生とした。演習授業の指導教員は15 年を経た熟練者とした。基本肢位は,肩関節中間位,肘関節90 ゜屈曲位,前腕90 ゜回外位とし,PNF 肢位は肘の屈曲を伴う屈曲-内転-外旋パターンとした。対象筋は上腕二頭筋とした。筋電図の解析にはMyoclinical(Noraxon USA, INC)を使用した。また測定では全員に測定についてのオリエンテーション後,口頭による予告信号を与え学習効果を避けるため2sec ~ 5sec の間でランダムに視覚外から短音を聞かせ,この短音信号で速やかに肘の屈曲を行うことを課題とし,実施3 秒程度を5 回測定,測定は第三者の教員に依頼した。統計解析には(IBM)SPSS21.0J を使用し有意水準はすべて5% 末満とした。</p><p>【倫理】</p><p>対象者には,ヘルシンキ宣言に沿った研究としての意義について十分に説明を行い,同意を得て,かつ本研究を説明し理解を得られた健常成人とした。仙台青葉学院短期大学倫理審査:承認2803)</p><p>【結果】</p><p>肢位による変化は,基本肢位に比べPNF 促通肢位でのRT,PMT,MT が有意に短縮した(p<0.05)。CG とLG の差分変化ではRT,PMT ともにLG において有意に反応時間が短縮した(p<0.05)。MT においては両者間に有意差は認められなかった(p>0.05)。</p><p>【考察】</p><p>特異性を持つPNF 肢位は,姿勢変化への非特異的な覚醒をもたらし脊髄運動ニューロンの興奮性を高めたことにより運動開始を促通したものと考える。またCG とLG の比較検討では,LG のRT,PMT がより短縮した。これはPNF 肢位に対する自覚性が異なるためLG の方が意識や注意である非特異的な入力量が大きくなり興奮水準が高まり,運動の開始を促通させたと考えられる。つまり,自覚性が努力,注意と言われる非特異的な情報量を増加させ,相乗効果をもたらした事が推察された。</p><p>【結論】</p><p>運動学習として実技だけでなくPNF についての原理・原則ならびにそのもたらす効果を授業の中で十分に説明し,動きなど効果の自覚性を持たせ実施することで相乗効果が期待でき,身体運動反応から活動の向上に効率的に繋がるのではないかと考えられる。このことから学習教育が実践応用として,先ずは学生教育にて興味を持たせることでより質の高い理学療法士を育てられるのではないかと考えられた。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), D-62-D-62, 2019

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713088653952
  • NII論文ID
    130007692863
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.d-62
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ