視床後外側部出血例における出血伸展方向がpusher現象の予後に与える影響について
説明
<p>【はじめに】 </p><p>我々は視床出血例を対象としてChungらの血管支配領域を基に視床出血を5つにタイプ分類した評価方法を用いて、出血タイプとpusher現象の出現率の調査を実施した。結果、視床後外側核群を主の病変とする後外側タイプはpusher現象出現率が58.6%を占めることが分かった。しかし、その中でもpusher現象の予後は様々であった。そこで後外側タイプのさらなる検討として、Computed Tomograpty(CT)画像を用いて、出血伸展方向を精査、pusher現象の予後にどのように影響を示すのか後方視的に調査を行った。</p><p>【方法】</p><p>回復期リハビリテーション病棟に入院した視床出血患者44名、その中から後外側タイプ+入院時pusher現象が陽性であった症例16 名を対象とした。男8名、女8名、平均74.6(63-88)歳、脳損傷側は右10名、左6名、感覚障害は75%にみられ、Brunnstrom StageはⅡ50%、Ⅲ25%、Ⅳ6%、Ⅴ6%、Ⅵ13%であった。さらに退院時のpusher現象の有無によりpusher群と非pusher群の2群に分類した。Pusher現象はScale of Contraversive Pushing(SCP)で各項目>0点を満たす場合をpusher現象有りと判定した。</p><p>CT画像の観察部位は、入院時に撮影した松果体・脳梁体部・ハの字レベルの画像を採用。松果体レベルでは、視床の前後径を基準として3等分し、前方から1/3を前部・2/3以降を後部とし、視床以外では内包後脚、被殻、島皮質それぞれ前後に2等分した計8部位を確認した。脳梁体部レベルでは、視床背側核群と放線冠の計2部位を確認。ハの字レベルでは、側脳室を基準に大脳縦列から側頭骨までの長さの40%部位で内側と外側に2分割し、前後では側脳室前後径を3分割した。前内側、中内側、後内側、前外側、中外側、後外側の計6部位の領域を確認した。</p><p>統計学的処理はそれぞれの部位で退院時期のpusher現象の有無をStatcel4にてフィッシャーの直接確立計算法を用いて2要因の関連性を検定した。優位水準はいずれもp<0.05とした。</p><p>【結果】</p><p>統計処理の結果、非pusher群に比較してpusher群で松果体レベルにおける内包後脚前部と島皮質後部、ハの字レベルにおける中外側領域で有意に損傷が確認された。内訳としてpusher群の損傷の割合は、松果体レベルの内包後脚前部8名(78%)・島皮質後部6名(66%)であり、ハの字レベルの中外側8名(88%)であった。非pusher群の損傷の割合は松果体レベルの内包後脚前部4名(57%)・島皮質後部1名(14%)であり、ハの字レベルの中外側0名(0%)であった。</p><p>【考察】</p><p>後外側タイプの出血は、視床後外側から内包後脚前部・島皮質後部を含み外側方向、且つハの字レベルまでの出血の伸展がpusher現象の予後に影響を与えることが示唆された。内包後脚前部の出血は皮質網様体路の障害による運動出力系の問題が、島皮質後部の出血は姿勢認知系の問題が生じると予測できる。姿勢定位のための実行系・認知系、両方のシステム障害が背景にある事がpusher現象残存の大きな要因となったと考えられる。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は当院倫理委員会の承認を得て実施した。</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), E-77_2-E-77_2, 2019
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390845713088678784
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- NII論文ID
- 130007693181
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可