脳卒中患者の急性期から回復期における理学療法実施時間の違いがバランス能力に与える影響

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抄録

<p>【はじめに・目的】</p><p> 当院では 2016年より急性期から回復期に渡る積極的な立位・歩行練習量確保を目的に,脳卒中入院患者に対し急性期の理学療法(PT)実施時間の増加,急性期病棟から回復期リハ病棟へのより速やかな転棟によるPT実施時間増加に取り組んでいる.</p><p> 本研究の目的は,脳卒中入院患者への発症60病日までのPT実施時間増加の取組みが,立位・歩行の背景にある姿勢の保持や調節に与える影響について検証することである.</p><p>【方法】</p><p> 対象は脳卒中の診断で当院に救急入院し,理学療法を処方され当院回復期リハ病棟へ転棟した患者である。PT実施時間増加の取組みを行った2016年5月から2017年10月までに入院した687名の内,PT開始時に病室におけるADL自立例,全身状態不良によるPT実施時間の増加困難例,49歳以下例を除外した59名(男性43名,女性16名)を調査群とした.対照群は,当院PT部門に蓄積された患者データベースの2010年6月から2011年6月までに入院した426名の内,調査群と同様の除外基準例を除外した59名(男性36名,女性23名)とした.以下,両群対象者の内訳を調査群:対照群で示す.平均年齢は65.6±8.7歳: 67.5±9.4歳,診断名は脳梗塞35:31名,脳出血24:27名,クモ膜下出血0:1名,障害名は右片麻痺26:29名,左片麻痺26:23名,両片麻痺5:3名,運動失調2:4名. 30病日の麻痺側下肢Brunnstrom recovery stageはⅡ4:1名,Ⅲ18:17名,Ⅳ10:15名,Ⅴ22:20名,Ⅵ3:15名,発症からPT開始までは1.6±1.7日:1.8±2.0日であった.これらの項目で2群間に有意差はなかった. </p><p> 調査項目はPT開始から30病日まで,ならびに30病日から60病日までの1日平均PT単位数,30病日,60病日のBerg balance scale (BBS)とした.</p><p> 統計解析にはt検定,χ2検定,Mann-Whitneyのu検定,Wilcoxonの符号付順位和検定を用い危険率はp<0.05とした.</p><p>【結果】</p><p> 1日平均PT単位数は,PT開始から30病日までは2.08±0.40:1.43±0.34単位,30病日から60病日までは3.05±0.58:2.31±0.66単位であった.PT開始から30病日,30病日から60病日までのいずれの期間も調査群の実施単位が有意に多かった(p<0.01).BBSは30病日では29[5.0-41.0]:24[5.0-39.0],60病日では41[21.0-50.0]:37[13.0-45.0]であり,群内比較で両群ともに有意な改善を認めた(p<0.01).さらに群間比較では,BBSの60病日から30病日の得点差は9[6.0-15.0]:6[3.0-13.0]で調査群が有意に高値であった.</p><p>【考察】</p><p> 取組みによりPT開始から30病日まで,30病日から60病日までの1日平均PT単位数は増加していた.また,調査群での30日から60日のBBSの得点差が有意に大きかった.このことから30病日から60病日内のPT実施時間の増加がバランス能力の改善に影響していると考えられる.一方で本研究では,PT実施時間の中での練習内容については示しておらず,今後は,実施時間の増加が立位・歩行練習量の増加につなげられているのかという検討が必要と考えられた.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p> 本研究は,横浜市立脳卒中・神経脊椎センター倫理委員会にて承認を受けた(研究計画番号:141800241).</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), E-79_1-E-79_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713088680064
  • NII論文ID
    130007693192
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.e-79_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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