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前脛骨筋腱裂離骨片を伴う右足部開放性脱臼骨折術後,早期足関節ROM運動を進めた一例
Bibliographic Information
- Other Title
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- ~自動背屈能、正座の獲得に至った症例~
Description
<p>【症例紹介】</p><p> 前脛骨筋 (以下,TA) 腱裂離骨片を伴う右足部開放性脱臼骨折に対し,骨接合,TA腱再建術を施行した症例を経験した.外傷性のTA腱裂離または断裂の治療に関する報告は極めて少なく,術後理学療法に関する報告は見当たらない.再建後のTA腱にかかるストレスに配慮しつつ,可及的早期に足関節ROM運動を進め,最終的に自動背屈能、正座の獲得に至ったため報告する.</p><p> 症例は50代男性のトラック運転手である.仕事中鉄板を右足部に落として受傷した.当院へ救急搬送され緊急手術(洗浄デブリドマン,脱臼整復)を施行した.足関節前面に皮膚欠損があり,内側・外側楔状骨,立方骨骨折と外側リスフラン関節,第3-4列間の脱臼を認めた.また,脛骨遠位前面にTA腱の裂離骨片を認めた.受傷後3日で骨接合,関節固定術(外側リスフラン,第3-4列間)を施行し,受傷後5日でTA腱再建術、足関節前面の皮膚欠損に対する逆行性腓腹皮弁を施行した.TA腱は足関節自然底屈位で内側楔状骨,舟状骨にanchorを打って縫着した.術後患肢非荷重となった.</p><p>【評価とリーズニング】</p><p> 再建術直後より足関節は中間位で固定し,術後1週より足関節ROM運動を開始した.TA腱に過度な伸張,収縮ストレスがかからないように,足関節他動背屈,自然下垂位までの底屈運動を行い,TA隣接筋である足趾伸筋群の反復収縮や後足部回内外運動を行った.術後3週より自動底屈運動を開始し,4週より他動底屈,自動介助背屈運動を開始し,6週で自動背屈運動を開始した.自動背屈開始時の足関節ROM(自動/他動)は背屈0/5°底屈25/35°であった.超音波検査(以下,エコー)を行い自動運動時,足関節前面でのTA腱の動態を評価すると,TA腱とpretalar fat padと皮弁下脂肪層が一塊に動いておりTA腱の滑走障害があると判断した.理学療法ではpretalar fat padのmobilizationとTA腱の滑走,伸張運動を強化しROM拡大を図った.術後8週で部分荷重開始しTAの筋力トレーニングを開始し,10週で全荷重となりCKCでの筋力トレーニングを行い足部機能改善を図った.</p><p> 受傷後5ヵ月半で内側楔状骨固定screw以外のインプラントを抜釘した.抜釘前は外側リスフラン関節周囲の荷重時痛が残存していたが,抜釘後に軽減が得られた.また,荷重位で足部外側荷重を呈していたため外側荷重を是正するインソールを作成した.</p><p>【介入内容および結果】</p><p> 受傷後6ヵ月.足関節ROM(自動/他動)は背屈25/30°底屈45/50°である.エコーではTA腱,pretalar fat padの滑走性,柔軟性は改善している.MMTは足関節背屈5,底屈3であり,しゃがみ,正座,階段昇降,走行可能である.長距離歩行時は前足部にVAS10mmの荷重時痛が出現し蹴り出しが低下する.日本足の外科学会足部・足関節疾患治療成績足関節・中足部判定基準は90/100点であり,患者満足度は80/100点である.復職しトラック,クレーン車の運転業務を行っている.</p><p>【結論】</p><p> 本症例は外傷性のTA腱裂離に重症度の高い足部脱臼骨折を合併し,再建後の足関節拘縮,周囲軟部組織の癒着リスクが高い症例であった.Sammarco(2009)は非外傷性のTA腱裂離または断裂に対し再建を行なったCase seriesを報告し,再建後の後療法では全例6週間固定していたが,本症例で6週固定すると足関節拘縮やTA腱の癒着が生じると考えた.理学療法に関する先行研究がないため筋腱断裂縫合術後の後療法を参考に医師と協議の上でTA腱にかかる負荷を決定し,早期足関節ROM運動を進めた.足関節底屈によるTA腱の遠位滑走,TA収縮に伴うTA腱近位滑走のストレスに留意し再建後3週から相反抑制をきかせた状態でのTA腱遠位滑走,4週から他動底屈によるTA腱遠位滑走,6週からTAの積極的収縮を開始した.6週以降はTA腱滑走障害に伴う底屈制限の改善に重点を置き理学療法を継続した.最終的に自動背屈能を獲得し正座可能となり良好な足部機能の獲得に至った.本症例は再建したTA腱の保護に努めながらもROMを改善するという相反するコンセプトの上で介入した難しいケースである.このようなケースにおける系統だった理学療法の報告はなく,症例に応じた対応が必要であると共に,症例報告の蓄積が重要であると考える.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>ヘルシンキ宣言に基づき,対象者には本研究の目的と意義について十分に説明し同意を得た.また,当院院内倫理委員会の承認を得た.</p>
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 46S1 (0), H2-167_2-H2-167_2, 2019
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390845713088730496
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- NII Article ID
- 130007693701
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed