足関節内果開放骨折術後に対し軟部組織損傷を考慮しながら可動域改善を図った1例

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  • -超音波エコー検査やレントゲン画像所見も交えて-

抄録

<p>【症例紹介】</p><p> Lauge-Hansen分類(以下:L-H分類)PER型stageⅣはROM制限に限らず,足関節脱臼骨折の中でも最も機能予後が悪いとされている.本症例は60歳代女性,入院前ADLは杖歩行自立レベル.舞台から転落して受傷,左足関節脱臼骨折(L-H分類 PER型 stageⅣ)と診断され,1週間の創外固定を行った.POD:7には観血的整復内固定術を行った.POD:28には腓骨アライメント改善を目的に内固定再置換術が行われた.POD:49より1/3PWBを開始,2週置きに荷重負荷を行い,POD:93 FWBとなった.段階的に運動療法を進め杖歩行にて退院された.今回,本症例に対しエコー検査やレントゲン画像所見を用いて,軟部組織損傷や組織間の癒着を考慮しながら運動療法を試みた.その治療経過や可動域制限に対する考察を徒手評価と交えながら報告する.</p><p>【評価とリーズニング】</p><p> レントゲン画像所見より脛腓靱帯・三角靱帯・足関節外側靱帯や長母趾屈筋(以下:FHL)・長趾屈筋(以下:FDL)・後脛骨筋において重度損傷を生じていると推察した.また,距骨位置不良に対し2度の腓骨整復を試みたが,距骨前方亜脱臼を認め,足関節背屈可動域制限因子となりうることを予想した.POD:12における徒手評価では足関節背屈-20°/底屈40° 安静時疼痛Face Scale(以下:FS):3 下腿最少周径24cm 第5中足骨底全周23cm figure eight:56cmであった.足関節背屈最終域にて足関節周囲に疼痛所見を認めた.足関節背屈制限として腫脹の要因が主体と考えた.POD:93徒手評価では足関節背屈10°/底屈45°安静時疼痛消失 下腿最少周径21cm 第5中足骨底全周23cm figure eight:53cm となった.足関節最大背屈位において疼痛の訴えはなく,足関節背屈最終域において下腿後面伸張感や足関節前方詰まり感を認めた.健側比較を行ったエコー評価では,背屈最終域における腓腹筋・ヒラメ筋・FHL・FDLの伸張性は低下していた.また,アキレス腱・FHL・FDL間にて浮腫所見を認めた.腓腹筋・FHL・FDL・Kager’s fat patにて滑走を確認することが出来た.Pretalar fat padにおいて癒着は認めず,前脛骨筋腱や長母趾伸筋腱による引き出し作用が確認された.足関節背屈制限因子として筋短縮や背屈に伴う筋内圧上昇により下腿後面筋伸張性低下が考えられた.これらの要因や距骨アライメント不良が距骨後方移動を阻害し,前方詰まり感につながったと推察した.POD:120におけるレントゲン画像所見は,内固定再置換術後と比較して,距骨前方亜脱臼の改善を認めた.足関節背屈15°/底屈45° 下腿最少周径21cm 第5中足骨底全周22cm figure eight:52cmであった.足関節背屈最終域において下腿後面伸張感や足関節前方詰まり感の軽減を認めた.</p><p>【介入と結果】</p><p> 創外固定時の早期からFHLやFDLの癒着予防や炎症管理,隣接関節筋力低下予防を開始した.内固定後より脂肪組織癒着予防や足関節自動背屈運動・介助運動を始め,荷重負荷量に応じて足関節他動底背屈運動や歩行練習を行った.結果,明らかな癒着は認めず,下腿後面筋における伸張性改善や距骨アライメント改善を認め,可動域を拡大することが出来た.</p><p>【結論】</p><p> レントゲン画像所見より軟部組織損傷の推測を行い,早期より癒着予防や損傷部を考慮して運動療法を実施した結果,可動域改善を認めた.距骨アライメント不良に対して、徒手的整復は困難と思われたが,下腿後面筋伸張性改善により距骨アライメント修正が行われた可能性が示唆された.本症例のような術後構造的破綻を認める症例において,軟部組織の柔軟性がアライメント修正に関与することも示唆された.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は,当院倫理委員会にて承認を得た.患者にはヘルシンキ宣言に基づいて文書と口頭にて意義,方法,不利益等について説明し同意を得て実施した.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-223_2-H2-223_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713088737920
  • NII論文ID
    130007693874
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-223_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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