経皮的炭酸ガス吸収法が糖尿病の骨格筋における代謝能低下や毛細血管退行に及ぼす効果

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>糖尿病による高血糖の暴露は骨格筋の酸化的リン酸化能や毛細血管数の低下を引き起こす.骨格筋の酸化的リン酸化能や毛細血管の低下は運動耐容能の低下を惹起する.一方,経皮的炭酸ガス吸収法はボア効果により組織の血流を増加させ,正常な骨格筋で酸化的リン酸化能や毛細血管を増加させる効果があると報告されている.そこで,本研究では経皮的炭酸ガス吸収法が糖尿病の骨格筋における酸化的リン酸化能や毛細血管数の低下に与える効果について検証した.</p><p>【方法】</p><p>本研究ではストレプトゾトシン誘発性糖尿病モデルを使用した.雄性wistarラットをコントロール群(CON),炭酸ガス群(CO2),糖尿病群(STZ),糖尿病+炭酸ガス群(STZ+CO2)に区分した.経皮的炭酸ガス吸収は1日30分,週5回,8週間行った.実験終了後,ヒラメ筋を摘出し解析を行った,組織化学染色から毛細血管の評価として毛細血管/筋線維比(C/F比)を算出した.また,酸化的リン酸化能の指標としてクエン酸合成酵素(CS)活性を測定した.酸化的リン酸化能に関わるPGC-1αやCOX-4,毛細血管新生に関わるeNOSやVEGF,毛細血管退行に関わるMDM−2やTSP-1の発現量をWestern blotting法で測定した.統計処理には二元配置分散分析とTukeyの多重比較検定を使用した.有意水準は5%未満とした.</p><p>【結果】</p><p>STZ群のCS活性やC/F比はCON群と比較して有意に低下した.また,STZ群のPGC-1α,COX-4,MDM−2はCON群と比較して有意に低下し,TSP-1はSTZ群で有意な増加を示した.一方,STZ+CO2群のCS活性やC/F比はSTZ群と比較して有意に増加した.さらに,STZ+CO2群のPGC-1α,COX-4,MDM-2,eNOS,VFGEはSTZ群と比較して有意に増加し,TSP-1はSTZ + CO2群で有意な低下を示した.</p><p>【考察】</p><p>本研究では,経皮的炭酸ガス吸収法は糖尿病の骨格筋におけるCS活性低下を抑制し,eNOS,PGC-1αを増加させた.炭酸ガスは組織の血流を増加させ,血管壁へのshear stressを上昇させる.その応力でeNOSが発現すると報告されている.また,eNOSは酸化的リン酸化能の調節因子であるPGC-1αを制御しする.これらのことから,本研究において,糖尿病に対する経皮的炭酸ガス吸収法の実施は血流増加に伴うeNOSやPGC-1αの活性により酸化的リン酸化能が改善されたと考えられる.一方で,本研究では糖尿病に対する経皮的炭酸ガス吸収法の施行は毛細血管数の増加や,VEGFやMDM-2の増加,TSP-1の低下が認められた. VEGFは毛細血管新性を促進する因子であり,eNOSにより制御されている.一方で,MDM-2は毛細血管退行を促進するTSP-1を制御する.したがって,経皮的炭酸ガス吸収法は血流増加によるeNOSを介した VEGFの増加やMDM-2介したTSP-1の低下により糖尿病による毛細血管数の低下を抑制したと考えられる.</p><p>【結論】</p><p>経皮的炭酸ガス吸収法は糖尿病による骨格筋の酸化的リン酸化能や毛細血管数の低下を予防する手段として有効的であることが示唆された.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は所属機関の動物実験委員会の承諾を受けて実施した.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-50_2-I-50_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713088777600
  • NII論文ID
    130007694277
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-50_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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