脳卒中片麻痺者の歩行中の関節可動域と最大歩行速度の関係

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  • -ImageJを用いた矢状面上2次元歩行解析-

抄録

<p>【目的】 臨床において歩行分析は視覚的に行われ、質的に評価されることが多く、歩行の評価、治療、および効果判定は主観的になりやすくなる。本研究の目的は、臨床において、比較的簡便に可能な歩行の運動学的評価を行い、その結果を治療計画や効果判定に用いることである。今回は、矢状面における歩行中の下肢関節角度と最大歩行速度の関係を調査した。</p><p>【方法】 対象は当院に入院した脳卒中者14名であった(年齢60.8歳、女性4名、発症から計測まで79.7日)。取り込み基準は歩行補助具および装具なく10m以上の自力歩行が可能なものとした。歩行中の関節角度を計測するため、肩峰、大転子、大腿骨外側上顆、外果直下の踵骨、第5中足骨頭部に蛍光色の卓球ボールをクラフト粘着テープで貼付し計測マーカーとした。対象者は最大歩行速度で約16mの直線歩行路を2回歩行し、その様子を約5m離れた矢状面からスマートフォンを三脚に固定し撮影した(1080p×30fps)。撮影した動画から、ImageJ(NIH)を用いて各マーカーの座標情報を抽出した。座標情報は計測ノイズを除去するためBryantのフィルタを用いて平滑化を行い、エクセルを用いて座標情報から股、膝、足関節角度およびTrailing limb angle(TLA)を算出した。TLAは肩峰、大転子、第5中足骨頭部から算出した。算出した角度はエクセルのマクロを用いて100%に時間の正規化を行った。得られた関節角度データから股、膝、足関節最大屈曲および伸展角度、屈曲伸展可動範囲を抽出し、麻痺側と非麻痺側の比較、および各変数と歩行速度との相関係数を計算した。</p><p>【結果】 対象者の歩行速度は中央値1.34m/sec、最大値1.79m/sec、最小値0.44m/secであり、0.4m/sec未満は0名、0.4~0.8m/secが2名、0.8m/sec以上が12名であった。麻痺側の各関節の最大屈曲(背屈)/伸展(底屈)角度/可動範囲は、股関節34/4/39度、膝関節61/14/47度、足関節15/11/26度、そしてTLAが19度であった。股・膝・足関節可動範囲、股・膝関節最大屈曲角度、および足関節最大底屈角度は、麻痺側が非麻痺側よりも有意に小さかった(p < 0.05)。最大歩行速度と関連の認められた関節は、麻痺側の膝最大屈曲角度、股・膝関節屈曲伸展可動範囲、麻痺側の足背屈底屈可動範囲、麻痺側TLAであった(それぞれr=0.591, 0.609, 0.657, 0.547, -0.710, すべてp < 0.05)。</p><p>【考察】 自力歩行可能な対象者であったため、比較的歩行能力の高いものが多かった。それでも麻痺側の歩行中の関節可動域は非麻痺側に比較し小さかった。今回の結果から、麻痺側の股屈曲伸展角度は十分な力学的エネルギー変換ができること、膝屈曲伸展角度は、stiff kneeや、crouch gaitでないこと、麻痺側の足背屈底屈角度およびTLAはankle rocker、push offに関連し、歩行速度との関連を認めたと考えられる。</p><p>【結論】 矢状面からの2次元的な運動学的歩行分析においても歩行速度との関連を検討することができる。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】対象者には研究の概要、参加が任意であること、参加しなくても一切の不利益がないこと、いつでも参加撤回できること、個人情報の取り扱いなどを口頭、および書面にて説明し、研究参加の同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-73_1-I-73_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713088779136
  • NII論文ID
    130007694292
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-73_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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