内受容感覚と皮質脊髄路興奮性の関係

DOI
  • 大鶴 直史
    新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所
  • 宮口 翔太
    新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所
  • 小島 翔
    新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所
  • 横田 裕丈
    新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所
  • 齊藤 慧
    新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所
  • 犬飼 康人
    新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所
  • 大西 秀明
    新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>近年、聴覚・視覚・触覚といった外受容感覚だけではなく、内臓や血管など身体内部の感覚である内受容感覚に注目が集まっている。内受容感覚の一つである心臓からの求心性入力は、R波から200~400ミリ秒後に皮質活動を生じさせることが知られている。このような心拍に伴った皮質活動は、視知覚に影響を与えることが報告されており、内受容感覚によって感覚知覚が変調することが示されている。その一方で、この内受容感覚が運動関連領野にどのような影響を及ぼすかに関しては、いまだ不明である。そこで、本研究では心拍(R波)により皮質脊髄路興奮性の変調が起こるかどうかを検討することを目的とした。また、その変調が内受容感覚鋭敏性の個人差により異なるかに関しても、併せて検討を行った。</p><p>【方法】</p><p>対象は,健常成人16名とした.皮質脊髄路興奮性の評価には、経頭蓋磁気刺激(TMS)による運動誘発電位(MEP)を用いた。TMSの刺激部位は、右第一背側骨間筋のホットスポットとし、同筋よりMEPを導出した。TMSの刺激強度は、安静時運動閾値(50μV以上のMEPが10回中5回以上導出される最小強度)の120%とした。TMS刺激条件は、心拍R波ピークと同時(R0条件)、R波ピークから100、200、300、400ミリ秒後(R+100、R+200、R+300、R+400条件)とした。各条件は少なくとも5秒以上の刺激間隔をもってランダムに提示し、各25試行のMEPを記録した。得られたMEPは、全条件の平均値で除することにより、R波からの潜時によるMEP変化率を算出し、解析に用いた。</p><p>内受容感覚鋭敏性の評価には、心拍検出課題を用いた。25、35、45、100秒間の4条件において外的手がかりなしで自己心拍をカウントさせ、以下の数式により内受容感覚鋭敏性の指標とした。1/4Σ|1-((実際の心拍数-カウントした心拍数)/実際の心拍数)|。</p><p>【結果】</p><p>一元配置分散分析の結果、条件間においてMEP変化率に有意な変化は認められなかった。しかし、R+200条件において内受容感覚鋭敏性とMEP変化率に有意な正の相関を認め、R+400条件においては有意な負の相関を認めた。</p><p>【考察】</p><p>本研究において、内受容感覚鋭敏性が高い被験者ほど、R波から200ミリ秒後に皮質脊髄路の興奮性が増大し、400ミリ秒後に皮質脊髄路興奮性が減弱することが示された。先行研究において、内受容感覚鋭敏性が高い被験者ほど、心拍からの求心性入力による皮質活動が強いことが知られている。体性感覚刺激時(外受容感覚)には、刺激からの潜時によって皮質脊髄路興奮性の減弱(SAI)および増大(AF)が生じることが知られており、内受容感覚の求心性入力によっても潜時による興奮性変動が起こることが示唆された。</p><p>【結論】</p><p>心拍による求心性入力により、皮質脊髄路興奮性が変動することが示唆された。しかしながら、この変動がどの脳領域由来のものであるかは不明であり、詳細なメカニズムの検討は今後の課題である。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言の趣旨に則り,所属機関の倫理委員会の承認を得て行った.また,対象者には,書面および口頭にて実験内容に関する説明を十分に実施し,実験参加の同意を得た上で実施した.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-91_1-I-91_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713088781952
  • NII論文ID
    130007694237
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-91_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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