分布型流出モデルへの適用を目的とした鉛直不飽和浸透の現地観測と解析
書誌事項
- タイトル別名
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- Observation and analysis of vertical unsaturated infiltration to be incorporated to a distributed runoff model
説明
<p>山地における土層・基岩層の鉛直不飽和浸透流は、その重要性が示されているものの、一般的に用いられる数値解析手法では鉛直方向の空間分割が必要であり、分布型流出モデルにおいては計算量を増大させる要因となる。そこで本研究では、鉛直不飽和浸透流を空間分割することなく簡便に計算できる物理モデルの開発を目的とした。</p><p> 実際の土層・基岩層での鉛直不飽和浸透の挙動を把握し解析を行うために、滋賀県大津市の桐生水文試験地において現地観測を行った。土層と基岩の境界がおよそ60 ~ 70 cmの深さにある地点において、地表面からの深さ30 cm, 60 cm, 90 cm, 120 cm, 150 cmの土壌水分量と30 cm, 60 cm, 70 cmの間隙水圧を計測した。観測から、基岩層90 cmにおける水分量の変化は土層と同等かそれ以上に鋭敏であり、急激に水分量が増加することがわかった。</p><p> 観測で得られたデータを再現するようなモデルの開発には、リチャーズ式の解析解を用いた。リチャーズ式は、土中の水分移動を記述する偏微分方程式であり、風化基岩への適用性も示されている。リチャーズ式の解析解は、計算に空間分割を必要としないため簡便な浸透計算が可能である。実際の計算に用いた圧力拡散方程式の解析解は、リチャーズ式を線形化し重力項を無視したものと同形であり、拡散係数と鉛直方向の透水係数をパラメータとして有する。</p><p> 圧力拡散方程式の解析解を用いた再現計算では、雨季のような初期土壌水分量が高いイベントにおいて、Nash-Sutcliffe 係数は概ね0.7以上となり再現性が高かった。また、初期土壌水分量が高いイベントにおいては、パラメータの拡散係数を一定にとっても、同程度の再現性があることがわかった。</p><p> 解析解から新たに導出したフラックス式を用いて、土層と基岩の境界におけるフラックスを計算し、数値解析との比較から適用可能性を示した。このフラックス式は深さ、時間、拡散係数の値のみから決定される。そのため、観測から一定の拡散係数を定めることができれば、簡便かつ複数の降雨イベントに対し同じパラメータで鉛直不飽和浸透流の計算を行うことができる。</p><p> 土層と基岩の境界におけるフラックスを入力として、基岩にも圧力方程式の解析解を適用した。その結果、深さ90 cmの土壌水分量波形と同形の圧力水頭波形が得られ、解析解の基岩の適用可能を示した。</p>
収録刊行物
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- 水文・水資源学会研究発表会要旨集
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水文・水資源学会研究発表会要旨集 32 (0), 150-, 2019
水文・水資源学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390846609779949952
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- NII論文ID
- 130007759925
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可