内側コンパートメントの有症膝における側方動揺性の検討

DOI
  • 辛嶋 良介
    社会医療法人玄真堂 かわしまクリニック リハビリテーション科
  • 井原 拓哉
    社会医療法人玄真堂 かわしまクリニック リハビリテーション科 広島大学大学院 医歯薬保健学研究科 博士課程後期

抄録

<p>【目的】</p><p>前回、膝関節の側方動揺性を超音波画像装置(以下、エコー)にて、関節裂隙距離を計測して定量化する方法を報告した。先の報告では健常膝を対象としており、有症膝については検討されていなかった。有症膝を対象に膝関節の動揺性を定量化して、関連する因子を検討することは、理学療法戦略の立案や病態運動の解明に関する一助となる可能性がある。本研究は膝関節内側コンパートメントに病態を有する患者の膝側方動揺性を計測し、関連する因子を検討することを目的とした。</p><p>【方法】</p><p>対象は、内側型変形性膝関節症または内側半月板損傷の診断を受けた女性24名、平均年齢63.5歳(48-75歳)であり、有症側を測定した。属性はBMIが平均24.4kg/m2、大腿脛骨角度(以下、FTA)が平均178.9°であった。</p><p>膝関節側方動揺性の計測には、KONICA MINOLTA SONIMAGE HS1の4-18Hzのリニアプローブを使用した。計測方法は、計測肢を上にした側臥位として、十分に脱力するよう口頭で指示をした。膝関節を最大伸展位として、角度をゴニオメーターにて測定した。エコーで外側の関節裂隙を描出、下腿の自重による内反負荷あり条件と負荷なし条件で関節裂隙の距離を計測した。また、負荷あり条件の裂隙距離から負荷なし条件の裂隙距離を減じた値を動揺値として算出した。</p><p>統計分析は、条件間での裂隙距離の違いについて対応のあるt検定を行った。動揺値と年齢、BMI、FTA、膝伸展角度との相関について相関分析を行った。有意水準は5%とした。</p><p>【結果】</p><p>膝伸展角度は平均-3.8±4.8°であった。裂隙距離は負荷なし条件で7.5±2.3mm、負荷あり条件で8.2±1.9mmであり、裂隙距離は下腿の自重を負荷することで有意に開大した(p=0.03)。</p><p>相関分析では、動揺値はFTAと有意な正の相関を認めた(r=0.42)。</p><p>【考察】</p><p>本研究における動揺値は膝関節の内反方向への動揺性を示すと考えられ、定量化できる点において本法は有用と考えられる。今回は有症膝の全体像を把握するために様々な病態を対象とした結果、FTAの増大つまり関節症性変化が重度であると膝関節の動揺性が高まることが示された。一方、なかには関節症性変化が軽度だが動揺値が増大している例もあり、そのような症例を対象として検討することで、障害予防を目的とする理学療法戦略の立案や病態運動を解明する一助となる可能性が考えられた。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究であり、研究の実施に先立ち当院倫理員会の承認と被検者の同意を得た後に実施した。また、研究に関する利益相反関係にある企業等はない。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390846609780245504
  • NII論文ID
    130007760769
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2019.0_17
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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