通所リハビリテーションでの家族を含めた在宅指導が運動耐容能の向上に有効であった心不全の1例

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抄録

<p>【はじめに】</p><p>通所リハビリテーション(以下通所リハ)にて,心不全患者に対し,本人および家族に自己管理指導や運動療法を行ったことで心不全症状の改善,運動耐容能の向上につながった症例を経験したので報告する.</p><p>【症例】</p><p>80歳代,男性,要介護1</p><p>診断名:狭心症,僧帽弁閉鎖不全症,深部静脈血栓症</p><p>現病歴:歩行時のふらつきが強く外出困難となり,転倒予防と運動耐容能の向上を目的に通所リハ利用開始となった.</p><p>Demand:妻と公園まで散歩したい.</p><p>家族構成:妻と2人暮らし.</p><p>自宅周辺環境:車道までの距離150mと階段15段あり.</p><p>服薬内容:ラシックス40mg,アムロジビン10mg,ベルベッサーRカプセル100mg</p><p>【理学療法評価】</p><p>身長159cm,体重65.8kg,BMI 26.1kg/m2</p><p>身体所見:両下腿に圧痕性浮腫.下腿周径 右35.5cm/左37.2cm</p><p>MMSE:22点.自己管理状況:病識に乏しく,週2回程度の薬の飲み忘れがあった.</p><p>握力:右20.0kg/左19.4kg.連続歩行距離50m:血圧122/60→152/70mmHg,脈拍80→112bpm,SpO292→86%,RPE呼吸困難11→14/下肢疲労11→15.SPPB:8点.Barthel Index:100点</p><p>【経過】</p><p>通所リハ開始時,下腿浮腫,歩行時の呼吸困難と低酸素血症などを認め,積極的な運動療法が実施困難な状況であった.その原因として,服薬忘れや,自覚症状の乏しさによる動作時の過負荷を考え,妻に服薬の確認を依頼,本人に心不全の病態の説明と低酸素血症に対するリスク管理などの指導を行った.併せて主治医の指示に従い,運動療法中はSpO290%を維持できるように動作方法や休憩のタイミングの指導を行った.1ヶ月後,体重が61kgに減少,下腿周径の軽減(右34.6cm/左35.4cm)を認め,歩行練習では50m×3セットが実施可能となった.この時点で,自己管理能力向上のために,本人および家族に心不全手帳の記載を指導,心不全管理の重要性が理解でき,パルスオキシメータを購入され,低酸素血症に対するリスク管理も可能となった.また,送迎時にPTが自宅に同伴し妻を含めて自宅周辺の屋外歩行練習の指導を行った.6ヶ月後,連続歩行距離は260m(血圧121/62→138/72mmHg,脈拍68→109bpm,SpO296→92%,RPE呼吸困難7→14/下肢疲労7→13)と改善を認めた.</p><p>【考察】</p><p>本症例は認知機能の低下により,自己管理が不十分であったため,送迎時に妻に症例と同様の指導を実施し,援助できるように努めた.その結果,自己管理能力が向上し,心不全症状の改善を認め,運動耐容能の向上につながったと考える.本症例を通じ,通所リハでの積極的な家族を含めた自己管理指導とリスク管理を徹底した運動療法を,通所リハ利用時のみならず,訪問指導でも実施することの重要性を認識した.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>ヘルシンキ宣言に従うとともに,本報告について本人と家族に口頭にて説明し,同意を得た.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390846609780272896
  • NII論文ID
    130007760840
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2019.0_49
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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