瀬戸内海表層水における1990年代と2010年代の溶存無機態 および有機態窒素濃度の比較

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タイトル別名
  • Comparison of Dissolved Inorganic and Organic Nitrogen between the1990s and2000s in the Seto Inland Sea of Japan
  • セトナイカイ ヒョウソウスイ ニ オケル 1990ネンダイ ト 2010ネンダイ ノ ヨウゾンムキタイ オヨビ ユウキタイ チッソ ノウド ノ ヒカク

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抄録

近年,瀬戸内海ではノリの色落ちに代表される低栄養塩濃度が問題視されている.一方で,瀬戸内海全域での栄養塩濃度の季節変動およびその経年的な変化はよく分かっていない.本研究では,1990年代と2010年代の瀬戸内海全域の各季節の溶存無機態窒素(DIN)および溶存有機態窒素(DON)濃度の測定結果を比較し,20年の間に起こった栄養塩濃度の変化について,その詳細を明らかにした.瀬戸内海全域,全季節の平均DIN 濃度は1990年代と2010年代との間に有意な差は認められなかった.しかし季節別にみてみると,2010年代は春季および夏季の観測時の塩分が1990年代よりも1-2程度低く,春季および夏季のDIN 濃度は1990年代よりも5μM 程度高かった.従って,春季と夏季には河川から供給されるDIN が海域のDIN 濃度に与える影響は経年的な瀬戸内海のDIN 濃度の変動よりも大きいと考えられた.一方,秋季および冬季は両年代で同程度の塩分であり,2010年代は1990年代と比較して0.5-3μM 程度のDIN 濃度の低下が認められた.このことは,瀬戸内海のDIN 濃度が全域を通して減少していることを示している.DON 濃度はDIN 濃度と比較すると,その数値は高く,また季節,海域を問わず比較的安定していた.瀬戸内海の栄養物質の起源は約半分が外洋由来であると考えられており,DON および全溶存態窒素濃度が経年的に大きく変化していなかった結果はその考えを示唆する結果であった.秋季および冬季のDIN 濃度の減少は底層からのDIN の溶出量の減少,あるいは水柱でのDIN 消費量の増加を示唆している.

収録刊行物

  • 沿岸海洋研究

    沿岸海洋研究 56 (2), 123-131, 2019

    日本海洋学会 沿岸海洋研究会

被引用文献 (1)*注記

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