ニホンザルにおける社会的遊びの終了時のコミュニケーションについて―取っ組み合い遊びの事例より―

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タイトル別名
  • Communication for termination of social play of Japanese macaques: with reference to rough-and-tumble play

抄録

<p>遊びは広く動物一般にみられ,認知や社会的発達などと関連して特に幼少個体において重要な行動であるといわれており,複数の個体が相互的に交渉する社会的遊び(以下遊び)では様々なコミュニケーションが交わされている。中でも遊びの開始,維持に関するコミュニケーションについてはプレイシグナルの観点から様々な研究がなされてきた。一方,遊びの終了に関するやり取りについてはこれまでほとんど議論されてこなかった。相互交渉の中で遊びのコンテクストが共有されるとその後は様々な行動がそれを通して解釈しなおされるため,あらゆる行動が「遊びである」と解釈されることになる。そのような状況において,「遊びはもう終わりである」ということを相手に示すような行動はないのだろうか。本研究ではそれを明らかにするため,宮城県金華山島のニホンザルを対象に,「取っ組み合い遊び」を起点として遊びの終了時の行動を調べた。遊びの終了時には一方の個体が相手から走って離れる場合,歩いて離れる場合,双方が近接のまま静止する場合の3パターンが存在したが,それぞれの行動に着目するとその後の個体間交渉には異なる傾向が見られた。取っ組み合い遊びの最中に,①走って相手から離れると追いかけっこ遊びへの移行になり遊びが終了しにくい,②歩いて相手から離れるとその後誘い掛けが起こらず遊びが終了しやすい,③双方が近接状態のまま静止するとその後誘い掛けが起こりやすいため結果的に遊びが終了しにくい。また,敵対的な意味合いが強いと考えられる威嚇や悲鳴,グリメイスは必ずしも遊びを終了させることにはつながっていなかった。これらの結果から,相手から「歩いて離れる」という行動が他の行動に比べ高い確率で遊びの終了につながることが示された。このことは,「歩いて離れる」という行動はありふれた行動であるが,それが遊びの最中に急に出現すると遊び終了のシグナルとして機能する可能性を示唆している。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390846609814837760
  • NII論文ID
    130007813540
  • DOI
    10.14907/primate.35.0_31_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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