完新世におけるサンゴ礁

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タイトル別名
  • Holocene development of mixed coral reef and mangrove systems
  • −マングローブ林共存系の発達過程

抄録

<p>はじめに</p><p></p><p> サンゴ礁とマングローブ林は熱帯・亜熱帯沿岸を縁取っており、高い生物多様性や防波機能を持っている。サンゴ礁とマングローブ林は共存している場合も多く、例えば小流域の河川の河口域にマングローブ林、その沖にサンゴ礁が成立している場合や、環礁などサンゴ礁の上にマングローブ林が成立している場合もある。サンゴ礁とマングローブ林が共存している場合は、相互に影響をして発達をしてきた可能性があるが、これまで、サンゴ礁の発達とマングローブ林の発達過程は別個に扱われることが多く、相互に与える影響は不明であった。</p><p></p><p>本発表では、サンゴ礁—マングローブ林が共存している地域での掘削調査により、完新世におけるそれぞれの発達を統合的に明らかにした例を紹介する。</p><p></p><p> </p><p></p><p>西表島・ユツン川河口域</p><p></p><p>本地域においては、河口域にマングローブ林が、それに隣接して離水ハマサンゴマイクロアトールが多く分布する礁原が分布している。さらにその2.5km程度沖には現成サンゴ礁が分布している。離水マイクロアトールの調査と現成サンゴ礁及びマングローブ林の掘削調査により、以下の3つの発達時期があったことが明らかとなった。</p><p></p><p>フェーズ1:岸近くのサンゴ礁発達(6500〜3900 cal yr BP)</p><p></p><p>塊状ハマサンゴと枝状ミドリイシによって岸近くにサンゴ礁が形成された。サンゴ礁は相対的な海面の落下と、ユツン川からの土砂流出によって発達を終了した。</p><p></p><p>フェーズ2:沖のサンゴ礁発達(1000 cal yr BPまで)</p><p></p><p>サンゴ礁が1000 cal yr BPにかけて成長した。石垣島など隣接海域に分布するサンゴ礁に比べて発達時期が遅れており、ユツン川からの淡水や土砂流入の影響が示唆された。</p><p></p><p>フェーズ3:マングローブ林の発達(1000 cal yr BPから現在)</p><p></p><p>沖合のサンゴ礁の防波効果と、岸のサンゴ礁が基盤を提供したことにより、マングローブ林が発達した。すなわち、ユツン川河口域においては、岸のサンゴ礁の成立、川からの土砂の堆積、沖のサンゴ礁の成立、その防波効果によるマングローブ林の形成という発達過程が示され、サンゴ礁がマングローブ林の発達に大きな影響を与えていることが明らかとなった(Yamano et al. 2019)。</p><p></p><p> </p><p></p><p>ツバル・フナフチ環礁</p><p></p><p> フナフチ環礁のフォンガファレ島はサンゴ礁起源の堆積物(サンゴ礫や有孔虫砂)からなる州島である。その州島の中央部にマングローブ林が分布している。マングローブ林でコアを掘削した結果、マングローブ林は389 cal yr BP以降にサンゴ礁起源の堆積物の上に成立したことが明らかとなった。マングローブ林直下のサンゴ礁起源の堆積物の年代は2703 cal yr BPであり、フォンガファレ島における既報の堆積物年代(2520 cal yr BP及び2550 cal yr BP; Ohde et al. 2002)と整合的であった。フォンガファレ島の成立年代は周辺の州島の成立年代とほぼ同じであったが、トンガ、フィジーなど近隣島嶼のマングローブ林の成立年代と比較してフォンガファレ島におけるマングローブ林の成立年代が遅いのは、基盤となるサンゴ礁及び州島の発達が必要であったことに加え、フナフチ環礁が他の島嶼から離れているためマングローブが加入しにくかったからと考えられた。</p><p></p><p> </p><p></p><p>引用文献</p><p></p><p>Yamano, H., Inoue, T., Adachi, H., Tsukaya, K., Adachi, R., and Baba, S. 2019. Holocene sea-level change and evolution of a mixed coral reef and mangrove system at Iriomote Island, southwest Japan. Estuarine, Coastal and Shelf Science 220: 166–175.</p><p>Ohde, S., Greaves, M., Matsuzawa, T., Buckley, H.A., van Woesik, R., Wilson, P.A., Pirazzoli, P.A., and Elderfield, H. 2002. The chronology of Funafuti Atoll: revisiting an old friend. Proceedings of the Royal Society of London A 458: 2289–2306.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390846609819200384
  • NII論文ID
    130007822031
  • DOI
    10.14866/ajg.2020s.0_148
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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