ユネスコ世界ジオパークとしての10年
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- 中村 有吾
- 室戸ジオパーク推進協議会
書誌事項
- タイトル別名
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- 10 Years as a UNESCO Global Geopark
抄録
<p>室戸ユネスコ世界ジオパークの概要</p><p></p><p>室戸ユネスコ世界ジオパーク(以下、室戸UGGp)は、四国の東南部・室戸半島に位置し、高知県室戸市域を領域とする。「海と陸が出会い、新しい大地が誕生する最前線」がテーマで、海に関わる環境や、海洋プレートと大陸プレートが形成する諸現象が、主要なトピックである。2008年に日本ジオパークに認定、2011年には世界ジオパークに認定された。2015年のユネスコ正式プログラム化によって、現在は室戸UGGpとして活動している。</p><p></p><p>10年間における室戸UGGpの変化</p><p></p><p>ボトムアップ体制の変化:地域住民参加による「ジオパーク活動推進チーム」の活動を再編成し、マスタープラン中の活動目標と組織の関係を明瞭にした。また、地域住民との関係をより密にするため「ジオパークいどばた会議」を地域内7カ所の会場で毎年開催している。</p><p></p><p>ガイド組織の変化:ガイド養成講座の実施により、毎年2〜3名の新人ガイドが誕生している。2018年度にガイドの会会長・事務局長が交代し、それぞれ30台・20台の若い会員が幹部となった。また、2015年から多様なガイドコースを開発し、体験型ガイドツアーも誕生した。</p><p></p><p>教育の多様化:放課後子ども教室や放課後児童クラブ(学童保育)と連携した小学生向けの教育活動をスタートさせた。調査事業や、防災教育、夏休み向けプログラムなどを導入した。</p><p></p><p>学術サポート体制の充実:「協議会顧問」に加えて、地質学、動物学、植物学等の専門家を専門アドバイザーに任命したことで、より多彩な学術サポートを得られるようになった。また、2018年度より、室戸UGGpでの学術研究調査に対して最大25万円の助成を開始した(2019年度は3件を採択)。これにより、地域内でつねに最新の学術研究が行われるという体制ができた。2016年から、専門員一名が高知大学客員講師の名称を得たことで、ジオパークとして科研費に応募が可能となった(2019〜21年度「基盤C一般」が採択)。</p><p></p><p>サイト見直し:2015年GGN再審査により、地質サイトと文化・生態系にかかわるサイトを分けるように指摘された。地域内の現地調査を経て、従来22あったジオサイトを、2018年に78のサイトへ変更した。</p><p></p><p>ネットワーク活動:2018年10月にマレーシアのランカウィUGGpと姉妹連携協定を締結した。2019年には地元高校生どうしの交流事業をスタートした。</p><p></p><p>問題点</p><p></p><p>このような成果の一方で、問題点も多い。ユネスコ世界ジオパークとしての国際的なネットワーク活動が十分でないとの指摘もある。ランカウィUGGpとの協定は、ようやくそのスタート地点にたったにすぎない。</p><p></p><p>南海トラフで発生する巨大地震は、室戸UGGpのメインテーマでもある。しかし、これまでジオパークとして防災に積極的に取り組んできたとはいいがたい。</p><p></p><p>事務局体制の持続性にも問題がある。事務スタッフは室戸市職員であり、市の人事異動により数年ごとに入れ替わる。3名在籍する専門員は3年契約の職員であり、長期間在籍するものがいない。長期的ビジョンを見据えた安定的な運営のためには、長期にわたって在籍できる職員の確保が必要であろう。</p><p>室戸も他の過疎地域の例にもれず、少子高齢化と人口減少が深刻である。近年「SDGs」が意識され、その普及イベントも行なっているが、持続可能な社会を実現する具体的な方策は未だ見つかっていない。</p>
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2020s (0), 129-, 2020
公益社団法人 日本地理学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390846609819208832
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- NII論文ID
- 130007822102
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可